夏日


「のう雀、あいを取りに行かんかや?」

響き渡る蝉の音にも負けない大音声を張り上げたのは、縁側の簾を上げて顔を覗かせた辰馬だった
あいとは土佐弁で魚の鮎を指す
自然の遊びを好む辰馬と雀は、昔にはよく2人連れ立って川へ涼みに出掛けたものだった

「いいね。今日はどうにも暑い」
「おん、外で待ちよるき」

ニカりと笑った辰馬は竿を用意するぜよと駆けていった
陽の光に反射したサングラスの残光を追いかけながら、雀はどこまでも昔と変わりない辰馬の仕草や笑顔にどこか安堵を感じていた

日の高いうちに川へ行きたいものと急いで身支度をする

久しく着ていなかった水着に少しばかり気恥しさを覚えた雀は、上に白いシャツを羽織りその裾を胸高に結んだ


サンダルに足を通し外へ出ると、照りつける白い陽光の中にいつの間に着替えたのか海パン姿の辰馬が待ち遠しげに立っていた
手には鮎を突いて取る突きじゃくりとシュノーケル、肩にはクーラーボックスを提げ腰には何処から引っ張り出したのか大きな浮き輪がはまっている

夏休みの男児がそのまま大きくなったような出で立ちの辰馬に、雀はおかしく笑ってしまった

「おんしが使うろうけ急いで膨らましたがやけんど…ちっと急ぎすぎたちや」

張りは申し分無いと雀に浮き輪を差し出す辰馬は少しふらついた
余程急いで膨らましたのか酸欠になったらしく目眩がするようだ

「大丈夫?嬉しいけど無茶はよして…」

「すまんすまん、もうなんちゃあない」

持ち直した辰馬は自動車へ荷を積み始めた

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