シュガーポンプ



いったいどんな声の掛け方をしたらこうなるのか。

聞かれるままに空いている日をいくつか挙げたものの、結局黒尾くんのくの字も出ないまま「カラオケ行かね?」と誘われ、二つ返事で了承して今に至る。のだけれど、教室までやって来た佐藤の隣には、紛うことなき黒尾くんがいた。事前連絡もそんなような気配も一切なかったあたり性格が悪い。

佐藤、君って奴はほんと、人の反応を見て遊ぶのが好きだね。こっちは頭が追いつかないです。


「……ええっと?」
「やー、みょうじとカラオケ行くんだけどどう?っつったら行くって言うからさー。二人じゃ愛想ねえじゃん?連れてきちゃった」


いや、連れてきちゃったてへぺろ、じゃないんですよ佐藤クン。君って奴はほんと。どうも有難うございますねほんと。お世話様です。


「なんかわりぃな。急に混じって」
「それは全然良いんだけど……黒尾くん部活は?」
「フロア点検でお休みです」
「あーね」


そう言えばこの前、顧問が言っていたような気がする。この日は点検があるから、置きっぱなしの機材はしっかり片付けておけよ、的な。今日だっけか。あれ、機材片付けたかな。まあ良いか。三年生よりかは真面目な後輩が、きっちりやっていることだろう。うん。

ようやく追いついた思考を携えて、スクールバッグを肩にかける。正面から見上げた黒尾くんは、それはそれは背が高くて肩幅があってかっこよくて、なんだか落ち着かないし心臓が変に痛い。


そんな私をニヤニヤ顔で一瞥した佐藤は「じゃあ行きますか」と、歩き出した。



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