そんな折、放課後の校舎裏に呼び出されて「好きや」って告白された。一回だけ高鳴った心臓は、さほど取り乱すこともなく困惑することもなく。ただ規則的な心音が、少し速まったくらいの変化を見せた。
私の手を掴んだまま。じっとこちらを見下ろす視線に、動く様子はない。
「ほんま?」
「おん。嘘でこんなん言わん」
「まあ、そうよな」
治がそういう人だってことは、よく知っていた。
でも、バレンタインなんかは両手いっぱいの紙袋を抱えるあのモテ男が、まさかこんなベタな告白をするだなんて。こんな何でもない私を好きだなんて、嘘みたい。
「好きな奴とかいとんの?」
「おらん、けど」
「ほんなら俺と付き合うてや」
「あの、疑ってるわけやないんやけど、ほんまに私でええん? バレーもよう知らんで」
「ええよ。別に、彼女にバレー求めてへんし。まあちょっと応援来てくれたら嬉しいなーくらいや」
「……」
「……あかん?」
きゅ、と握り直された手。八の字に下げられた眉。腰を屈めた治の、縋るような視線がちょっと可笑しくて「あかん」の後に「くない」を付け足せば、一瞬垂れた耳がピンと立った。「ややこしい言い方すんなやもう……」って、ずいぶん詰まっていたらしい息が盛大に吐き出される。
「ごめんごめん。治めっちゃ必死なんやもん」
「そら必死にもなるわ」
「何で? ライバルおらんやん」
「……ツムがおるやんけ」
「え、侑も私のこと好きなん?」
「知らんけど、そうかもしいひんやん」
あいつにはとられたなかってん、って子供じみた台詞に思わず笑ってしまえば、遮るようにすっぽり抱き竦められた。誰かに見られたらって心配よりも、治の匂いが鼻腔を伝って肺いっぱいに広がって、ふんわり落ち着く。「なまえ」と呼ばれるままに広い背中へ手を回せば、もう一度「ほんま好き」なんて腑抜けた声。まあずいぶんとベタ惚れですこと。