恵まれた個性を持つその他大勢の中で、たったひとり。ちょっと物を動かせるとか、ちょっと高く跳べるとか、そんな、大して役に立たないものすら与えられなかった孤独だけが、いつも私の傍にいた。羨ましいとか妬ましいとか、そういう感情は小学校三年生くらいで綺麗さっぱり消え失せて、心の中に残ったのは自分に対する諦めだけ。
たぶん、前世でよっぽど悪いことをしたのだろう。だからどうせ、ろくでもない人生なのだ。個性無しって履歴書だけで笑われて、生きていたって良いことのひとつもなくて、せめて来世くらいは立派になりたいなあなんて夢を見て、誰かの命を救って死んだら、その夢も叶うかなあなんて単純思考を嘲笑って。
たぶん、世の中全部に絶望していた。
だから、バカなことをした。
頭二個分ほどだろうか。背が高い男の背中。緑色のジャンパーに飛び込んで、力いっぱい押す。途端に耳を劈いた乾いた音。鋭い痛みが全身を駆け抜けて、視界が霞んで、ぷつり。ブラックアウトする意識の中、最後に聞こえたのは自分の吐息だった。