なみだはぼくがぬぐってあげる



弔くんは、たまに。本当に極たまに、泣いている。たぶん連合の皆は知らなくて、きっと古い仲だろう黒霧さんも把握していなくて、弔くん本人ですら気付いていない。ソファでうたた寝をしている時。一月に一度あるかないかくらいの極めて低い頻度で、彼は、その瞼を閉じたまま泣いている。




「弔くん」


ソファの背もたれから覗く白い頭に、声をかける。けれど、面倒くささを隠そうともしない気だるげな返事が寄越されることはなかった。きっと、うたた寝でもしているのだろう。正面に回って顔を覗き込むと、案の定皺だらけの瞼は閉じられていた。

連合に入ったばかりの当初に比べ、近寄っても起きなくなったのは素直に喜ばしいけれど、こんなところで眠るのはいかがなものか。疲れているのか、安眠出来る場所がないのか、夢見が悪いのか。


つ、と頬を伝う、透明な雫。

まただ。
また、泣いている。


起こさないよう気をつけながら――いや、別に起きてしまったって構わないのだけれど、なんとなくそうっと、曲げた人差し指の背ですくい上げる。濡れた皮膚から伝わる僅かな冷たさと、ほんのり尾を引く弔くんの温もり。

かくんっと前へ落ちた首に続いて傾いた上体を受け止めれば、耳元で唸り声がした。


「……何してる」
「おはよう、弔くん」
「おはよう……」


寝惚けているのか、文句のひとつもなく返された挨拶に頬が緩む。華奢なように見えてしっかり男の子な背中をさすれば、溜息と共に重みが増した。嬉しいけど、さすがにちょっときついかな。この体勢。


「まだ寝る?」
「ん……」
「ベッド行こ」
「お前は?」
「一緒に行くよ」


頷いた弔くんは、のっそり体を起こした。はずれたのか、はずしていたのか。脇に転がっていた"お父さん"と呼称される手を顔につけ「行くぞ」と歩き出した猫背を追う。

泣いていたことは言わない。きっと私以外、知らなくていいことだと思うから。



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