君がいれば夜も平気さ



うとうと、うとうと。
真夜中の静けさ。唇に残っているカサついた感触。舌の上の甘味。好きな人の体温。

沈みかける意識をなんとか繋ぎとめながら、心地よさに浸る。爆豪くんとの間に会話はない。それでも気まずさや不安はなく、この時間が永遠に続けばいいとすら思う。運命が私達を結んだんだって、なんだかすんなり腑に落ちた。たぶんもう、何も恐れる心配なんてない。

瞼が、重い。


手の中にあった空のマグカップがさらわれ、身じろいだ彼の腕が私の背中と膝裏を支えた。ふわりと全身を襲ったのは、抱き上げられたのだろう浮遊感。少し冷たいシーツの感触に、瞼を薄ら押し上げる。細い視界に映るのは、隣に潜り込む愛しい姿。ぼやけた意識のままにその名前を呼べば、まるで当たり前のように呼び返してくれた。

朝まで一緒に寝てくれるのか。それとも、私が寝付いた頃には帰ってしまうのか。ほんのりと甘い香りが漂う胸元へ鼻先を埋めながら、出来ることなら、目覚めるその瞬間まで傍に居て欲しいと願う。


背中へ回した腕で、きゅ、とTシャツを握る。

今までにない安らかな微睡みの縁で聞こえた、安堵が滲む優しい「おやすみ」は、胸の底へと溶けて広がった。



もう、眠れない夜はこない。


fin.




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