真っ白な空から、同じく真っ白なものが音もなく降りてきて、あたりの音までも吸い取ってしまうのを、シイラとベポはじっと見ていた。
「やまないね、雪」
くっついてるとあったかいから、という理由で、ベポにぴったりと身を寄せているシイラが、どこかうれしそうにつぶやいた。寒いのは大の苦手であるシイラだが、雪はきらいではない。その、底のないような白さが好きだった。
寒さのほうも、いまシイラは厚手のコートを羽織り、マフラーも身につけている。なにより、ベポにくっついているのだ。防寒対策は万全だった。
「うん、やまないな。……シイラ、寒くない?」
シイラのくっついている右側はとてもあたたかい。もしかして、自分があたたかいぶん、シイラが寒い思いをしているんじゃないかと、ベポは心配だった。
「寒くないよ。ありがとう」
シイラがベポを見上げて微笑む。ベポはなんだか、胸の辺りがじわりとあたたかくなるような気がした。
ふと、背後で扉の開いた音が聞こえる。振り返ると、ペンギンとシャチが湯気のたつマグカップを、ひとつづつ手に持って立っている。
「ココア持ってきた」
ペンギンはそう言って、マグカップを少し持ち上げた。
「マシュマロ入れようとしたら全然なくってさ、1個づつしか入ってないんだ」
残念だけど。と言いながら、シャチはシイラにマグカップを手渡す。ベポもペンギンからマグカップを受け取った。
「「ありがとう!」」
ベポとシイラはにこにことお礼を言う。
「いいって」
「気にすんなよ」
シャチとペンギンも笑顔を返した。
ココアをひとくち飲んだベポとシイラは、顔を見合わせてふにゃりと笑った。
「おいしい!」
「ね!誰がつくったの?」
おれでーす!とペンギンが手をあげる。
「えー!ペンギンってココアつくるの上手だったんだな!」
「わたし、いっつも美味しくできないんだよね。こんどコツ教えて!」
「いやァ、褒めるな褒めるな……」
口ではそう言いつつ、まんざらでもなさそうなペンギン。その隣ではシャチが、うれしいくせに、という顔で笑っていた。
「にしても、雪、やまないよな……」
相変わらず視界にちらつく雪に、シャチが空を見上げてつぶやく。
「こりゃ夜まで降るかもな」
ペンギンの声はたちまち白さにのまれる。
「じゃあ、雪合戦は明日までお預けか〜……」
ベポが残念そうにうなだれた。うなだれながらココアを啜って、おいしい、と呟いている。
「まあ、明日になればやむんじゃないか?冷えてきたし、そろそろ戻ろう」
ペンギンがそう言って踵を返すと、シャチもそれに続く。ベポとシイラも、もうどこが空と地上の境目かわからなくなった景色に一瞥を投げて、二人のあとに続いた。
ふと、なにかを思い出したように、ベポがぱっと顔を輝かせる。
「そういえば、キャプテン、明日はヒマだって言ってた!」
「そうなの? じゃあ、キャプテンも誘おっか」
「……いやァ、それはやめとかない?」
「キャプテンまじでチートだからなァ……」
「えー!?でもキャプテン、おれとシイラにはずるしないよ!」
「「だからだよ!!」」
船内へと向かうシャチとペンギンが振り返りながら声をそろえる。シイラの笑い声は、底のない白さにしんしんと吸い込まれていった。