キャプテンに怒られた。まるい目に涙をいっぱいに溜めたなまえがぽつりと言葉をこぼす。
キッチンで絡まった釣り糸と睨めっこしていたおれは、まあ座れよ、と向かいの椅子を指した。なまえは大人しく椅子に座る。
怒られた理由を訊いたら、無茶のしすぎだって、という答えが返ってきた。頬やら腕やらに貼られた絆創膏、巻かれた包帯を見て、まあそうだよな、と喉から出かかった言葉を危うく飲み込んで、なるほど、と当たり障りのない言葉を吐き出す。
「無茶ってなに? わたしはみんなの役に立ちたいだけなのに」
なまえの目から涙がこぼれた。
そりゃわかってるよ、キャプテンだって。ばかみたいにまっすぐで、自分のことなんか二の次の、そんななまえが傷付くのなんか見たくないからあのひと怒るんだろ。そうやって頭の中だけで言葉を回して、怒られた理由に気づかないのを良いことに、おれはなまえの味方ですよって態度で、少しづつ少しづつ、溶かすように距離を詰めて行くおれはなんて狡い人間なんだろう。
「そうだよな」
腕を伸ばせるだけ伸ばして、俯くなまえの頭をくしゃくしゃとなでる。顔をあげて安心しきった顔で笑うから、隣に立つまであと少しだと笑ったおれに、きっとなまえは気づかない。