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「ひっじかったさ〜ん!」


「おわっ!」


大好きな後ろ姿を見つけ、私はつい、彼に飛び付いた。


「薫!おま、あぶねぇーだろ!」


「えへへ〜」


「えへへって…お前な…。ったく、どうしたんだ?」


黒ぶちメガネを外し、仕事用の机から私に体を向けた土方さん。


「土方さん、今日はずっと家居ますよね?」


土方「ん?…あぁ、今日と明日は一応な。…どうした?」


私の頭を撫でながら微笑み聞く土方さん。


「いえ、その〜…」


「何だよ。お前らしくねぇーな、」


そう言ってさっきの笑みとは裏腹に私を物珍しそうに見て笑う。


「あ、あのですね…」


「おう、どうした?」


やっと話を持ち出した私に優しく問う土方さん。

ああ…やっぱりかっこいい…

じゃなかった!


「今日、5月5日…じゃないですか…」


「そうだな」


「あの…き、今日って土方さんのた、誕生日じゃないですか。ですから…」


と、私はそこで言葉を切りポッケに入れてたプレゼントを取り出す。

「き、今日と明日、土方さんの休日…私にくれませんか?」


プレゼントを渡しながら自分でも分かるくらいの真っ赤な顔でそう言う。


あ〜何か恥ずかしいよ!

自分、何てことを…!


「おまえ…っ」


土方さんを見れば彼の目は大きく見開かれ驚いた顔をしていた。


これは…。
失敗したか!



「えっと……あ、あの…」


恥ずかしさの余り土方さんの部屋から逃げようとしたその時だった。



ギュッ...
「!」


背中にあたたかい、温もりが感じそれが誰か確認しなくても分かる。


「ひ、土方さん…」


「お前…なんつー事言ってんだ、バカ野郎…」


「ご、ごめんなさい…」


「あーいや、そうじゃなくてな。
なんつー可愛い事言ってんだよ。」



耳元に掠れた声が、温かい吐息があたる...


「…言われなくても、俺の休日は薫に任すつもりだったよ。」


「ほ、本当ですか?」

「ああ、本当だ。」

「よ、よかった〜…」


「2日しかないが、よろしくな。
……そういえば、このプレゼントの中身なんだ?」



私の首に回してた手に私が上げたプレゼントがあった。
彼をイメージした紫の包装紙は綺麗に巻かれており不器用な自分がよく出来たと誉めたいところだ。



「っあ、それは万年筆です。土方さん、誕生日プレゼント何がいいか分からなくて考えてたんですけど思い付かなくて…。
仕事場、土方さんは万年筆使う場面あるの思い出したのでそれで…」



なんて、言ってるうちに土方さんは包装紙を剥がして、中身を取り出していた。



「この万年筆…俺が持ってるのと同じやつだな。ちょうど、今の万年筆が壊れてきてな。こいつは書きやすいからまた買いに行こうとしてたんだ。助かったよ。ありがとうな、薫。」



「いえ、喜んで貰えたならよかったです!」


振り替えって、土方さんを見る。


「…でも、俺はもっと欲しいものがあってな…?」


「えっ!?」



いきなりの言葉に戸惑う。
準備してないよ…


「三つ、お願いしていいか?」


「わ、私が出来る事なら…。た、ただ、そのプレゼントは少し遅くなりますよ…?」



「それじゃ、ダメなんだ。今日、この日に欲しいんだ。」




な、なんて事だ!
今日のうちに三つも用意は出来ないぞ…



「心配すんな。物じゃねーから」


「えっ?そうなんですか?……じゃあ、私に出来る範囲のプレゼント、お渡ししますよ!」



ニコリと微笑むと土方さんは私から離れた。




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