Side Conan.E
事態は、全てを置き去りにするかのように突然動いた。
「ん?なんだろ、これ…」
「蘭ー?何か見つけたの?」
「どうしたの?蘭姉ちゃん」
それぞれが探索を始めて少し時間が経った頃。
蘭がどこからか"ソレ"を見つけたのだ。
「へー可愛いじゃない!売り物かしら?」
「でも値札が無いよ?何が入ってるんだろう…?」
ゴールドのリボンで封が縛られている、白色の不織布のラッピング袋。
ある程度の膨らみがある様子からして何かが入っている。
(実際に販売されている商品か…?)
だとしても、客に提供する品物をデパートの備品倉庫に置く筈が無い。
それでは売り物としてあまりにも管理が杜撰すぎる。
それに、
(何だ?この明らかな違和感は…)
蘭の手に収まっているソレは、どこからどうみても此処に置いてある他のものと比べると異質だ。
俺や蘭達がこれまで此処を探索して見つけてきたのはボールペンや伝票などの文房具類や、東都デパートの社名とロゴが印刷されている包装用紙や紙袋などの梱包資材そのものだ。
ざっと見たところ、それら全てが一つ一つ物ごとに纏められていた。
だから此処はテナント毎の商品や資材を閉まっている倉庫ではなく、デパートそのものの備品を管理している倉庫だと分かった。
それがここに来ていきなり、東都デパートはおろか、
テナントの店名やロゴ等の印刷が何も無い真っ白な袋にラッピングされた袋が一つだけ見つかるなんて…
怪しすぎる。
どう考えてもおかしい。
何が入っているか分かったもんじゃ…
(……まさか!?)
刹那、最悪の可能性が俺の思考を過ぎる。
急いで蘭から袋を受け取ろうと顔を上げると、既に蘭がガサガサと袋のラッピングを解いていた。
(ッ!?何やってんだアイツは!!)
おいおい無闇矢鱈に開けるなよ!と焦っているのは俺だけ。
何故なら蘭からしてみればソレはただのラッピングされた袋。せいぜい誰かが買ったプレゼントが入っているとしか思わないだろう。
(そもそもこいつらは此処に爆弾が仕掛けられてることを知らねーんだった…!)
ラッピング袋に手を入れている蘭を止める間も無く、
ウキウキ顔の蘭が袋から取り出したのは……
「わぁ!これかわいい〜!」
きゅるんとまんまるの大きな目。
ぽてっと垂れ下がる大きな耳。
ふわふわの、まっしろなからだ。
「へ?」
それは、うさぎのぬいぐるみだった。
「やだっかわいい!うさぎのぬいぐるみじゃない!」
「ねー!有名なメーカーのかな?タグとか何も付いてないみたい」
「デパートに置いてあるくらいだし、ノーブランドって事は無いと思うけど…流石のアタシでもぬいぐるみのブランドは分からないわね」
「そうだよね…。でもほんと可愛いね、この子。目もまんまるだし、素材もふわっふわだよ」
蘭が見つけた綺麗なラッピング袋に入っていたのはふわふわのうさぎのぬいぐるみ。大きさは15センチくらいってとこか。
特に珍しくもない、よく或るぬいぐるみだ。
蘭と園子は可愛い可愛い、と言ってぬいぐるみを色んな角度から見回してる。
(それにしても、何でこんなところに…?)
袋の中身こそ、てっきり此処に仕掛けられている爆弾だと思っていたが…。
まさか、あんなぬいぐるみの中に?
いや、東都デパートが全壊する規模の爆弾ならもっと大きい筈だ。
いくらお腹の部分に多少スペースがあるとはいえ…まあ、そのぬいぐるみを実際見てみないと分からないが。
…って、俺は何悠長なこと言ってんだ!?
早く蘭から袋を取り返さねえと!!
蘭の持つぬいぐるみに向かって手を伸ばそうとした、その時ー
「お嬢さん、ダメですよ」
蘭の手からぬいぐるみをひょいっと奪い取られた。
奪い取ったのはあの靴紐の彼女だった。
「え?」
「そんな無闇矢鱈に触ってはいけません」
「でも、ただのぬいぐるみですよ?なんか、」
「ただのぬいぐるみだからこそですよ。袋でラッピングもされていたようですし、お客さんが買ってそのままの忘れ物かもしれないでしょう?」
人当たりの良さそうに微笑む彼女。
柔らかく言ってはいるが、どこか有無を言わせないような圧を感じる。
返事は聞かない。
いいから触るな。
恐らくそう言っているんだ。
そんな彼女の圧を無意識のうちに感じ取ったのか、はたまた誰かが購入したプレゼントを忘れたのかもしれないという可能性に引っ掛かったのか。
蘭自身も何か言いたげではあったが、最終的にはその言葉を引っ込めて「そうですね…」と不織布の袋ごとぬいぐるみを彼女に渡していた。