死にたがりヒーロー


ーーーああ、疲れた。今日も終電だ。

すっかり日も暮れ、日付も変わった頃。
やっとの思いで最終電車に乗る。


学生時代、勉強も部活も周りに合わせるようにやってきた。特に成績がよかった訳ではないが、悪かった訳でもない。普通に生きてきたのだ。特に目標もなく、時代に流されるように生きてきた。

いや、今では思い出せないだけで、夢中になっていたものが俺にもあったのかもしれない。何が好きで、何になりたかったのだろうか。


朝7時に家を出て、休みもなく、毎日残業代のでない仕事をさせられる。

上司の顔色を伺い、周りに合わせる。反発をしない従順な部下は、社畜そのものだ。


そんな日々の繰り返しだった。



「…もう死のう。」

無意識に口から零れた自殺願望は、斜め前に座る酔いつぶれたおっさん一人と俺だけの車内に消えていった。俺を止める人間など、ここにはいない。












mokuzi