02
気づけば自宅のマンションの屋上に、自然と足が向かっていた。
いつ帰ってきたのかは分からないが、とりあえず頭の中には“飛び降りて死ぬ”という思考しかなかった。
「…風が気持ちいい」
死ぬ間際に感じる風は、妙に優しく俺を包み込んでいる。俺は屋上の縁に足をかけた。
ーーー下が妙に騒がしい。
屋上に立つ人影を見つけた正義感の溢れる人間が、通報でもしたのだろうか。俺のことなんか、放っておいてくれればいいのに。
「……は?」
気配を感じ自分の隣に目をやると、同じように縁に足をかけている中学生くらいの男の子。
ふわりと風が吹き、髪に隠れた顔が現れる。
見た目よりも大人びた感情の薄いその横顔には、妙に痛々しい大きなガーゼが貼られていた。よく見ると、腕や足には傷がある。
「お兄さんも、死ぬの?」
「……え、ぁ…」
「…僕と、一緒…」
彼はそういうと、ふわりと前に傾いた。
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