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逢麟国<おうりんこく>。
ここは人間の他に神が共存している国である。
人間を皇族の男性が治め、皇族の中でも霊神力の強い女性が担っていた役職を姫巫女という。
















皇族が政を行う内裏…とある邸へと向かう1人の少女。

「弥琴様はどちらへ?」

綺麗な庭を通り、縁側から邸の中に声をかけた。
彼女がこの物語の主人公..風姫だ。
風姫は皇族の女性の中でも上位の霊神力を持つ姫巫女だ。

「わたしならここにいるぞ、風姫」

邸から顔を出したのは、政を行う皇族の1人..弥琴だ。
彼は頭も顔も良いため、周りから期待をされ…女性にも良くモテる。

「申し訳ありません。弥琴様…突然押し掛けてしまって…」

風姫が弥琴に姫巫女式の礼をとった。

「かまわぬ。急ぎだったのであろう…それにそなたが内裏へ来るのは久方ぶりだ」

「私は“風の姫巫女”ですから東にあります“青龍の祀り”から出ることがかないません。…そして、弥琴様」

風姫は本題へ入っても良いかと弥琴に目で問う。

「そう怒るな風姫。そなたは本当に神しか目に入っていないな…」

「弥琴様、何か?」

風姫は、弥琴にとてつもなくにっこりと微笑んでいる。

「いや、何でもないぞ…風姫……続けてくれ」

弥琴は風姫に弱いらしい…。
風姫は、少し優しく微笑むと話を続けた。

「風の神や炎の神達..四神の使いの役をしている神々があなたに話したいことがあると…」

「皇族ではなく、わたし個人にか?」

「はい。できれば今すぐにと言っていたので私が参りました」

弥琴は少し考え、近くにいた使いの者に馬を用意しろと命令を下した。

「風姫、行き先は青龍の祀りで良いか?」

「はい。ですが私は馬には…」

乗れないと言う前に馬の用意ができたようだ。
風姫は弥琴に困った顔をした。

「大丈夫だ。わたしと共に行こう」

弥琴は馬に先に乗ると、風姫に手を差し出した。
おずおずと弥琴の手をとった風姫は、軽々と持ち上げられて彼の前に座らされた。

「愛しき風姫が我が腕の中…良いものだな(さわり心地が…)」

風姫を触る弥琴の手付きがいつの間にか、いやらしい。
その手を風姫は容赦無く叩いた。

「弥琴様。お戯れもいい加減にしてください…神々がお待ちです」

弥琴は風姫に睨まれると、わかったと馬を走らせて青龍の祀りに向かった。

(弥琴様の戯れはうざい…姫巫女は純潔で在り続けなければならない・・・)

(どうしてそなたは可愛いげがないんだ…そんな風姫にわたしは惚れたのだがな・・・)

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