W(完)

6年前、わたしはこの古城に迷い込んだ人間の少女を見付けた…


 ̄ ̄ ̄―――_____


『あなた誰!?私を食べてもおいしくなんてないんだからね!!』



美味しそうな血をしている人間の少女。



「わたしは“ドラキュラ伯爵”だ…お前の名は何という?」



『…ルキ…...ねえ、あなた空を飛べるでしょ?

私ね高いところ大好きなの!

空を飛んでみたい!!』




久方ぶりに面白い人間を見付けた…このわたしにこんなことを言うとは・・・



「気に入った、ルキ…お前にわたしの真名を教えてやろう」




 ̄ ̄ ̄―――_____




「わたしの名はゼネルガだ…」



記憶の言葉を音にした。

腕の中のルキはもう、私の真名を呼ばぬ…



ルキと初めて出逢ったのはこの古城だ。

まだ幼かった…確か歳は12だと言っていたはずだ



最初は恐がっていたくせに、わたしの翼を見た瞬間に目を輝かせた



「散歩にでも行くか?お前は高いところが大好きなのだろう…」



温もりのないルキをしっかりと抱き、窓から外へ出た。

星明かりがルキの顔を照らす。



「…もう一度だけ、わたしを呼んではくれぬのか?」



解っている…もう、お前の声を聞くことは叶わない。


わたしは、ルキ…



お前を…



「愛していた…」







ドラキュラ伯爵は、その名の通り…少女の首筋に牙を立てた・・・・・





星明かりの夜

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