X(完)

月明かりが照らす、旧校舎の屋上。
空を見上げているルキの背中には綺麗な揚羽蝶の羽がはえている。

「…私はアゲハ蝶……人間の“願い”を叶えることのできる…幻夢揚羽」

ルキの瞳から頬を伝う涙が風に吹かれて舞い落ちる。

「私はカズマの“願い”を叶えられたかな…?」

冷たい風がルキの髪をさらうと、雪が降り始めた。
ルキが雪を見つめていると、姿が揚羽蝶へと変わる…いや、戻る。

『ここはあなたのゆめのなか…』

真っ白い世界へと飛んでゆくルキは、やがて雪に混ざって見えなくなる…。


















カズマの願い…

それを幻夢揚羽..ルキが具現化した世界は消える…


夢の時間は

“揚羽蝶の死を迎えてから現実世界に2度目の雪が降るまで”









 ̄ ̄ ̄―――_____

「アゲハ蝶…?」

雪の降る中、いつものように身体中に傷を作っているカズマの足元に揚羽蝶が舞い落ちた…。

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