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カズマの居場所など解らないはずなのに…ルキの足は走り続ける。
そんな中、ルキの頭の中には、不思議な光景がフラッシュ・バックしていた。

「私は、アゲハ蝶だったの…あなたに幸せを感じてほしいと願ったの・・・」

ルキが来たのは、旧校舎の裏だ。
そこは不良のたまり場で、ルキが初めてカズマを見た場所である。

「かはっ…くっ……」

カズマが数人の男子生徒に囲まれて、袋叩きにされている…。

「お前うざいんだよ!」
「いつも女の後ろに隠れてんじゃねーよ」

カズマの瞳は、初めてルキが見た時と同じように彼等を睨み返している。

(あなたは変わらない…)

ルキは一瞬だけ感傷に浸ったが、カズマを傷付ける男子生徒を許せない…ルキは持っていた鞄をその場に置いた。

「カズマ!」

ルキはカズマを助けるために走り出すと地面を蹴り、宙に舞う。

「なっ…ぐはっ!」

男子生徒が1人、ルキによって蹴り飛ばされた…ルキは不良生徒では無いのだが、ケンカが強い。
カズマを守るために身に付けたのだ。

「次は誰?それとも…」

男子生徒達はルキに恐れをなしている。
なにげにルキは学校で強いと有名だ。

「覚えてろよ!」

定番なセリフを残して、男子生徒達は走って行った。

「…うっ…ルキ...…」

痛む傷を押さえながら、カズマはルキを見上げた。
ルキはカズマに駆け寄って膝をつくと、心配そうに見詰めた。

「ごめんね…いたい?苦しい?」

悲しそうに、いつかの問いをルキはした…。

「…っ…そんな顔するなよ…大丈夫だから」

カズマは立ち上がり、大丈夫だと笑って見せた。

「っ…カズマ…!」

ルキは潤んだ瞳をそのままにカズマに抱き付いた。

「え…ルキ!?///」

突然の事に、また初めて見るルキの姿に驚きと抱き付かれた事にテレるカズマ。



(カズマ…あなたに幸せを感じてほしかったの・・・)

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