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揚羽蝶のカズマは、楽しそうに青い大空を羽ばたいていた。

『さて、きょうはどこをとぶ?』

パタパタと羽をバタつかせて、カズマはとある校舎の窓から教室に迷い込んだ。

「ねえルキ、放課後遊んで帰ろうよ」

「うん、いいよ」

どうやら今は休み時間のようだ。
カズマは今“ルキ”と呼ばれた少女を見詰めていた。

『ルキ…?』

何故か知っているような気のする名前…それに、姿。
遠い過去、ルキと過ごしていた記憶を思い出していた。

『…そんなこと、ないよな?』

カズマが適当に誰かの机の上に降り立ってルキを見詰めていると、女子の悲鳴が聞こえた…。

「いやーーー!虫!!」

ビュッ…と教科書が揚羽蝶であるカズマに上から迫ってくる…。
気付いた時には遅かった。

『うわっ!(まだそらとびたかったな……オレは“ルキ”のねがいをかなえてやりたい)』

そうカズマが思うのと同時に、バンッ…と教科書の餌食になった。

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