V(完)

次の日。
今日は休日のためカズマは自分の部屋にいた。

「ルキ...」

カズマはベッドに仰向けに寝ながら、ルキの事を考えていた...。

「お前の願いは、何で...」

カズマは悔しそうに、哀しそうな表情をして右手で顔をおおう。
幻夢揚羽である自分にルキが願った事。



ーーー“カズマが幸せでありますように”



何でそんな事を願ったんだ。
今はオレがお前の願いを叶える側なのに...。

「オレはルキに幸せであってほしい」

開いていた窓から、冷たい風が吹き込んだ。



もうすぐこの世界..ルキの夢を幻夢揚羽であるカズマが具現化した世界は終わる。

現実世界に2度目の雪が降る。












 ̄ ̄ ̄ーーー_____

雪の降る街中。
ルキは傘をくるくる回しながら歩く。

「“あの時”から、私は......」

ふと気付いたようにルキが雪の降る空を見上げると、季節外れの揚羽蝶が1羽...ひらひらと舞い降りる。
ルキが手を伸ばすと“彼”は最期の力を振り絞り、彼女の手に降り立った。

『おれはおまえを.........』

人間であるルキに、幻夢揚羽であるカズマの声は届かない。
ぱたり...と揚羽蝶はルキの手の中で息絶えた。

「カズマが好き」

もう動く事の無い揚羽蝶を優しく包み、ルキは傘に隠れて泣いた...。

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