V(完)

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最後にとどめだと云うように、風乃は空中から鉄扇・舞風の持つ攻撃の最大魔法を発動する。

「風の鎖で捕らえ、精神の地獄に引きずり込もう。我が死神となりて風の鎌を降り下ろす」

風乃の詠唱により、主である蓮都の魔力が魔法人形である風乃に注がれて鉄扇・舞風を包み込んで形が鎌へと変わる。

「魔衣、死神の鎌・舞風」

傷だらけで地に伏せている敵に、容赦無く風乃は鎌を降り下ろした。
その表情は何処か哀しそうで、魔法人形の顔とかけ離れていた...。






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「行くぞ、風乃」

敵を倒した風乃が蓮都のところへ戻ると、彼はそのまま歩いて先へ進んで行ってしまった。
逆光で彼の表情は見えなかったが、蓮都もまた敵を倒した事に心を傷めているのが伝わる...今この瞬間、魔法人形でしかない、魔法使いの武器でしかない自分が何もできない事がとてももどかしい。

「蓮都...」

まるで生きているような、うつ向いて泣きたそうな表情をしている風乃。
気が付けば、蓮都を追い掛ける事を忘れてしまっていた。

「泣くな!」

え...?と思った時には目の前に蓮都がいて、抱き締められていた...。

「今の俺じゃ、風乃を守りきれない」

どんなに風乃が気付かれないようにしていても、蓮都はそれに気付いていたのだ。
風乃が彼のためを思い、隠してきた魔法人形にあるまじき感情と..そして涙.....。

「ごめんなさい..蓮都......」

ぎゅっと蓮都が風乃を抱き締める腕に力がこもり、そして彼の右手が風乃の頭の後ろへ回された。

「この魔法界から離れよう...そうすればもう少しマシになる」

個々の魔力で世界を越える事は、魔法界では違法行為に当たる。
それがバレれば今よりも確実に敵が増える。

それでも_____

「蓮都が笑える世界があるなら...私はあなたの武器ですから」

風乃が蓮都を見上げてニコッと微笑む...瞳から一筋の涙が頬を伝い落ちた。



(私は、蓮都の笑った顔が見たい...)

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