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ダーク・ジェイルの中庭。とても綺麗で美しい花たちや木々が心を癒す。
だが今のルキアには、ただ四方を城に囲まれた檻の中…癒しなど受けず、苦痛でしかない。

「…本当に、声がきこえない・・・」

ここは城の中で聖域だ。強い結界によって護られているため世界の声はきこえないから大丈夫だとリオンに言われたのだ。
女王の能力を持つ者にとって世界の声を常にきかなくてすむ事は“救い”なのだ。
無神経に“感情”や“女王への祈り”ばかりをぶつけてくる世界の声をきかずにすむのだから…。

「星の意思に心を蝕まれる気分はどうだ?」

嫌味っぽく言われた男の声にルキアは聞き覚えがあると感じた。

「……………」

リオンのナイトだった男…。ルキアは敵を見るように睨み付けた。
リオンのナイトは、ユウガが鬼で魁人もヴンパイアなのだ。人間のルキアにとって“敵”でしかない。
それにこの男に見つかったために、自分が女王である事と居場所が前女王であるリオンにバレたのだ。

「ここにいた方が“幸せ”だろ?世界の声なんて……」

魁人はそこで言うのをやめた。魁人は右手を自分の首にやり、首の後ろをかいている。
ルキアには何故か彼が苦しんでいるように感じられた。

「…カゴの中の鳥になれって?」

だが今のルキアはイラついているし、自分を守る事に必死だ。

「お前が現女王だろ!!早く女王の玉座につけ!」

いきなり怒鳴った魁人…。ルキアは、冷たい瞳で目の前の魁人を見つめていた。

(…この人は、世界を嫌っている……)

ルキアは昔から、他人の感情を直感する事が多かった…。自分勝手な思い込みかと思っていたが、何気に当たっている。

「…悪い..忘れろ・・・」

魁人は、ばつが悪そうに言うと中庭を出て行った。
ルキアはそんな魁人を見送り、冷たい瞳に涙をにじませていた。

「似ている…」











同時刻。ここは“女王”と名のついた者しか入れない“星の意思”と対話をし、星のすべてを見透す場である。
真っ黒という言葉があっているのかすら分からない…闇色の空間。
前女王であるリオンは現女王のルキアを守り支えるナイトを探していた…。
これは、女王の玉座を下りた前女王の仕事の一つである。
まず、現女王を探しこの城 ダーク・ジェイルへと案内し…女王のナイトを決める。
その後、女王の執務や内容などの引き継ぎをして…この城から、出ていかなければならないのだ。

「…ごめんなさい..ルキアさん・・・」

リオンは切なそうに前女王として…最後の仕事を続けた…。

『リオン…あなたをこの城に閉じこめてしまう私を“許して”とは言えない…でも、どうか..心を壊さないで…!私のようにならないでッ…!!』

リオンの前の女王..つまり先々代の女王が、この城を出ていく時に現女王であったリオンに言った言葉を思い出していた…。


















前女王が現女王にナイトを選ぶ…


それは、罪のような意識にさいなまれるからか・・・・・



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