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そう、これは“私”の記憶。





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暗闇の星、太陽村。ここに生きる1人の少女がいた。
太陽村はこの星を支配する魔王が自分の狩りの場としている場所である。人間は魔族に劣り、喰われるという関係が成り立っている。
そのためこの村では定期的に、魔族が一番好むとされる15歳から18歳くらいの娘を魔族へと捧げる決まりがある。

「すまぬな、お前ももう18歳だろう。この村のために魔城に行ってくれぬか。お前も知っての通り今年15歳になる娘はおらぬ、皆がこの決まりを嫌がってこの時期に当たる子供をつくらぬのだ。」

村の端にある湖の向こう側、何も寄せ付けない雰囲気を漂わせている魔城を見上げていた黒い髪を風に靡かせている少女に話し掛けた、杖をついてこちらに歩いてくる1人の老人。彼はこの村の長だ。

「はい、今回は私だろうと思っていました...この前は私と年の離れた従姉でしたし」

長を振り返る事もなく、静かに少女はそれを受け入れた。この村のために、人間がこの星で生きていくために...犠の役目を。

「すまぬ、ルキア」

長は深々と頭を下げている。村のためとはいえ、村の者は自分の家族だと考える長はこの決まりを一番に嫌っているかもしれない。
この前に魔族へ捧げたのは、少女と同様に自分のひ孫であるルキリアという娘だ。村の者は自分の娘を魔族に捧げる事を最後まで拒み、魔族の機嫌を損ねていた。
長は仕方無く、当時12歳の少女を捧げる事を決めたのだ。

「おじいさま、私もルキリアも村のために決断したあなたをせめたりしません」

後ろを振り返り、ふわりと笑ってみせた少女の朱色の瞳はとても穏やかで優しい色をしていた。













太陽村の広場。
ここを広場というのは名ばかり。村から遠く離れていて周りには何も無く、誰もいない。
ただ中央に石造りの魔方陣の描かれた大きな台があるのみである。
この場所は魔族に捧げる少女を台の上に置き、魔族が空からその肉を取りに来る場所である。

「きっと次はリオンね...」

台の上に座り、眩しい太陽に目を細めて青空を見上げていたルキア。ふと視線を落として呟いたルキアは、石造りの魔方陣を撫でていた。

「今回は期日通りか」

遠く上から聞こえた、低く唸るような声。
空から降り注ぐ太陽の光が大きな大きな影で遮られると、ぐわっと風が吹き荒れた。
すでに石造りの台の上に、ルキアの姿は無い。

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