みゆきちゃんと答え合わせ



「み〜ゆきちゃ〜ん、答え見せて〜」
「はいはい」

教科書を見れば分かる問題だと先生は言うけれど、私にとっては教科書すらも問題のようなものだ。数学の先生が休みなせいで発生した自習課題なわけだから、答案がないのを教卓で暇そうに突っ伏している先生のせいには出来ない。けれど、それでも納得がいくかと言われれば納得がいくわけでもない。だから、授業終了間際に人の答えを少々写す程度のささやかな抵抗くらい、なんの問題もないはずだ。

「あのさあ」
「んー?あ、ねえこれ9?0?」
「それは0だな‥‥あーこの前俺告白されたじゃん?」
「おーなんだ自慢か?惚気か?」

御幸のそういう話はあんまり聞いたことがないなと思ったのが顔に出たのか、ニヤニヤしてんじゃねーよと小突かれた。照れなくてもいいのに。

「そうじゃなくて、断った」
「は?」
「は?じゃねーよ!」
「ええ‥だって‥‥あんなに褒めてたのに」

心変わり早くない?それとも突然目が死んだか?と思う限りの可能性を上げてみる。その度に御幸が楽しそうに笑うので、面倒になってまあ御幸の恋愛事情なんかどうでもいいか‥と最後の一問を写した。

「お前の反応が面白くなかったから」
「はあ‥?どゆこと‥」
「俺がいなくなったら寂しいとかさ」
「‥‥つまり‥?」
「もっとヤキモチとか焼くの期待してたってこと」

なにそれ。なんだそれ。沸々と湧き上がる感情を理解できずにいた私を無視して、御幸はプリントをかっさらう。じゃあ提出してくるな、と二人分の用紙を持って教卓へ向かった御幸の背中を、私は呆然と眺めるしかできなかった。



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