同じクラスの女の子
「みゆきかずやみゆきかずや〜〜っと」
自分の名前を探して、人と人との間を縫うように歩く。「お、みゆきかずやあった」と声をあげてクラスを確認していると、横から痛いほど刺さる視線。
「みゆきって苗字?」
俺が彼女の方を向くと同時に、彼女は名前の羅列へと視線を戻した。
その横顔からはあまり強い感情を感じ取れなくて、一瞬本当に彼女から声が発せられたのか耳を疑ってしまう。
「おう」
質問の意図も分からないまま事実だけを辛うじて述べる。すると、俺の答えを聴いた目の前の彼女は、少し考えるようなそぶりをしてから、これからいたずらでもするかのような子供っぽい表情で、楽しそうに微笑んだ。
「‥いいじゃん。親にみゆきちゃんと遊ぶって言っても男ってこと騙せそう」
「‥‥へ」
その言葉にもその表情にも、他意などきっとなかったんだろう。
彼女はただ、親をびっくりさせてやれる、ただそれだけの理由で、俺にそう言ってのけた。
呆然とした頭でようやく、彼女の名前を訊こうと思い立った時には、彼女は既にいなくなっていた。
こびりつくほどに強く印象的な、彼女の表情を俺の頭に残して。
「‥ま、お前記憶力悪いもんなー」
「は?いきなり喧嘩売られた」
憶えてるはずないか、と目を閉じてため息を吐くと、容赦なく頭に鉄槌が落ちる。
「っ痛ぇ〜〜!頭は駄目だろ頭は!」
「お?頭じゃないならいいってことか?よし任せろ」
ぶんぶんと腕を振り回す苗字にストップをかければ、俺があの日友達になりたいと思った時と同じ顔をして、楽しそうに微笑んだ。
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