みゆきちゃんの知らない知人
「久しぶり」
目の前に現れた爽やかな好青年に、御幸は首を傾げた。これまでに対戦した選手か誰かだろうか。しかし憶えていないのだからしょうがない、いさぎよく聞いた方が早いだろうと、御幸が冷たい結論を出したところで苗字が珍しく(御幸との口論以外で)大きな声を出した。
「? どちら様で‥」
「え、久しぶりー!あれ?!一緒の高校だったっけ?!」
「うわなまえひっでー!憶えてねえの?!‥っていうのは冗談で、今年転入してきたんだよ」
「焦ったー!そこまで私記憶力なかったかと!」
「さすがにそうだとなまえマヌケすぎだろ!」
「うるせー!」
苗字と男子生徒が話しているのをすぐ横にいながら蚊帳の外で見ているしかできない御幸に、すぐ後ろを歩いていた倉持が声をかける。
「‥‥御幸」
「‥‥‥‥‥」
「御幸!」
「!! ‥あ、なに?」
「すげー顔してんぞ」
「マジ?」
「マジ」
乾笑している御幸を引きずるように教室に戻りながら、倉持はゆっくりと、しかし盛大に溜息を吐いた。
ホームルームが始まる前に帰らなきゃ、と名残惜しくも話を切り上げ、駆け足で教室に戻る。
席に戻ると、御幸が口元だけに笑みを浮かべて、おかえりと言ってきた。
……なに、その怖い顔。
そう口にする前に、御幸は矢継ぎ早に話しかけてくる。
「名前で呼ばれてんのな」
「あー、向こうも苗字って名字でさ、なんか同じ名字で呼び合うのもなんだし〜みたいな」
「へえ」
興味のなさそうな返事に思わずイラっとするも、それ以上にイライラしていそうな御幸の横顔を見て、固唾を飲んだ。
「‥‥御幸、なんか機嫌わるい?」
「べつにー?」
「いやわるいでしょ!目が笑ってないじゃん」
「そんなことねーって」
先生の話が終わる前から鞄を手にしていた御幸は、ホームルーム終了早々に立ち上がった。
「じゃ、俺部活だから」
「‥おー、がんばれ」
「!」
部活もあるし、変に理由聞くのも変か。部活絡みかもしれないし。大変なんだなー部活動って。倉持くんもだけど。そんな風に手を振っていると、心なしか御幸の表情が和らいだ気がした。
御幸は教室の入り口付近で突然立ち止まったかと思うと、こちらを振り向いて先程までの不機嫌な様子がウソだったかのようにニッコリと気色の悪い笑みを浮かべた。
「また明日な、なまえチャン」
「‥‥‥‥は?」
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