ーーー刀と刀のぶつかる音が響く度に、ふと思う。
俺は一体、何のために戦っているのだろうか。


本丸への帰路、他の奴らが談笑をし始める。
戦いが終わったばかりだというのに、何を呑気な。
それとも、俺のこの余裕のなさすらもが、写しだからということなのだろうか。

聞こえてくる会話の内容は、審神者のことだ。
俺たちはみんな、審神者によって人間の姿を保っている。
俺たちの全ては、審神者のものだ。
審神者のために生まれて、審神者のために生きて、審神者のために死ぬ。

まるで奴隷だなと、思った。
写しである自分に相応しい立場だと。

空を見上げながら、自分を嘲笑う。
冷たい風が、刺すように俺の首元を吹いた。


ちりん。

小さく鳴ったその鈴の音に、話に夢中だった五人が一斉にこちらを向いた。
主、とぽつりとこぼされた言葉は、誰のものかはわからない。

「山姥切国広、それ、大将のか?」

小鳥のように小さく囀ったその鈴は、審神者が普段着けているものだ。
この鈴が鳴ると、皆途端に笑顔になって、審神者を取り囲む。
この鈴は言わば審神者の象徴なのだ。

そこまで思い出してから、はっと思い出す。
出陣前に審神者と会話したことを。
装備を拒もうとした俺に、自分の鈴のついた紙紐でお守りを結びつけていた、審神者の姿を。

「…そうみたいだな」

小さくそうとだけ呟いて、歩みを止めていたが仲間たちを置いて歩き出した。
寸刻経った後、思い出したかのように後ろを駆ける音がする。
まるでこの鈴の音についてきているかのように。

歩くたびに小さく、俺のタイに結びつけられた審神者の鈴が鳴る。
鈴の音が聴こえる度に浮かぶのは審神者の………なまえの、穏やかな笑顔だ。


本当は奴隷だなんて、思ってなどいなかった。

あいつはいつだって俺達に家族のように接して、
時には自分を犠牲にしてまで世話を焼いてくれる。
俺達があいつを嫌いなわけがない。俺があいつを、疎ましく思う、わけがない。

ただあまりに青っぽくて、馬鹿げていて、認めたくなかっただけなのだろう。
この、心に募る、身の程知らずな温かい気持ちを。

「………なまえ」


きっとこの青空の向こうで、あんたは待っているのだろう。
馬鹿みたいに真っ直ぐで、綺麗な瞳をして。

いつもみたいにおかえりと、言ってくれるのだろう。


だからきっと俺は、戦っているんだ。



ALICE+