「進路、ねえ」
可愛い妹分でもある幼馴染のなまえ。そんな彼女が珍しく真剣な表情をして家に来たかと思えば、進路の相談だった。真剣に悩んでる!という割に毎晩日付が変わる前には電気を消して寝ているのだから随分健康的だ。
「薬研お兄ちゃんはそのまま就職したんだよね?どうして?」
「ん?そりゃあ、このまま兄貴一人に家計支えさせるわけにはいかないからな」
「んむむむむ…実に立派な回答で……」
「なんだそりゃ」
家は両親共に他界していて、兄貴が一人で働いて俺や他の兄弟たちの面倒を見ていた。頭の上がらないことだ。高校を出た俺と厚は何の迷いもなくそのまま就職して、そのまま家に金を入れている。…つまり、進路の相談にうまく答えてやれることは殆ど無かった。
「でもでもでも、私は薬研お兄ちゃんみたいに立派に働けるような技量も社交能力もないの!」
「……まあ、否定はしきれないな」
「う……それに、乱ちゃんみたいに専門とか行くーみたいに行きたい道も決まってないし…」
「乱はガキの頃からファッションデザイナーになるって言ってたからなあ」
「あーーーーーーもう!!私の好きなものってなにーーー?!!」
「んー………」
ーーーなまえが小さい頃なりたがっていたもの。それはずっと隣にいた俺が一番よく知っている。
中学に入って。部活が忙しくなって。構ってやれる時間がなくなった途端ぱたりと言わなくなってしまったけれど。好きだ好きだと喚いてそばに置いておけなくなれば泣いて、他のヤツに取られまいと独占欲をひけらかして。
ーーーーーーなのに全部全部、忘れて。
今ではこんなにもあっけらかんとしている。人にこんなにも傷跡を残しておいて、本当に、残酷な奴だ。
「まあほら、夏休みがあるだろ?休み中さっさと宿題し終えて、そんでめいいっぱい考えろ」
「うう………それでも、何も浮かばなかったら?」
「もしそれでも駄目だったら、その時はーーーー……」
『わたし、おおきくなったらやげんおにいちゃんのおよめさんになるー!!』
「………俺っちに、相談しに来い。力になってやる」
…プロポーズするのは、さすがに早いか。
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