障子の隙間から木漏れ日が差し込んで、朝の訪れを告げる。獅子王は、体に眠さが染み渡るようなあくびをこぼしてから、ゆっくりと起き上がった。春の暖かな光と優しい風がより一層彼の消え去っていない眠気をくすぐるのを感じながら、獅子王は目的もなくふらふらと縁側を歩いた。

「……お、なまえ〜」
「あ、獅子王くん!おはようございます」

箒で庭を掃いていたらしい審神者を見つけ、獅子王は途端に笑顔を浮かべ彼女のところへ向かう。

「手伝うか?」
「いえ、掃除終わりに散歩していたところなんです…一緒にきますか?」
「おう!」

視線が自然と審神者の背後にある花へと向かう。朝露に濡れ艶やかに光ったその花は、どこか審神者の雰囲気に似ていた。

「綺麗な花だな」
「ええ…牡丹といいます」
「ぼたん?」
「………衣服についてる方じゃないですよ?」

くすくすと審神者が笑っていると、獅子王は牡丹にそっと手を伸ばした。思わず審神者が獅子王に声を掛けると、獅子王は幼子のようなあどけない顔で、花を取りたいと言う。

「牡丹、一つとっちゃダメか?」
「駄目ですよ。花はそのままが美しいんですから」

そうだよなあ、と聞き分けは良いものの、獅子王は至極残念そうな顔をした。なまえに似合うと思ったのに、と言葉を零せば、審神者の顔はぽぽぽ、と音を立てて赤くなった。

「ふふふ…その気持ちはとても嬉しいです、ありがとう獅子王くん」
「ん、そうか? …なまえが嬉しいなら、俺もよかった!」

二人穏やかに微笑んでいると、どこからともなく皆の賑やかな声が聞こえ出す。本丸の朝がやってきた、と審神者は腕まくりをして、獅子王は今度こそ手伝うと意気込んだ。


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