ふと脳裏に浮かんだ顔を探して、獅子王は当てもなく本丸内を歩いていた。歩き始めた幾分経っただろうか、塀のそばで必死に背伸びをしている審神者を見つけ、不思議に思いながらゆっくりと近づいた。

「……何してんだ?」
「わっ!獅子王くん!お散歩?」
「まあ、そんなとこだな!で、主は何やってんだ?」

主の顔が見たかっただけ、という本音を飲み込んだ獅子王は、再度審神者に質問を投げかける。

「塀のむこうで、雀が水浴びしてるんです」
「すずめ?」


獅子王が審神者と同じく背伸びをして塀越しに覗くと、そこには水たまりでぱしゃぱしゃと楽しげに戯れる雀たちの姿があった。

「昨日の夜、少し雨が降っていましたし、それで水たまりが出来たんですね」
「そういえば雨音がしてたな」
「そろそろ梅雨ですねえ…」


雨ばっかはやだなあ、と何の気なしに審神者の方を見た獅子王は、その横顔を見て、息を呑んだ。


「……おかげでいいもん見れたな」
「ですね! ああ、かわいい…」


先刻まで脳内にあった雨への嫌悪感は、まるで最初からなかったかのように綺麗に流れていく。こんなに愛らしい光景が見られたのだから、雨に感謝せねばなるまい。


「…ほんと、かわいいな」


その言葉の真意が通ずることはないだろうと、獅子王は再び雀に視線を戻した。

獅子王と審神者の背の高さは、あまり変わらない。けれど、獅子王にはどれだけ高い下駄をはいても、なまえには届かないような気さえしていた。それは、彼女が高い位置にいるのか、自分が沈んでしまっているのか、理解し得ないまま。


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