「失礼します…」

がらがらと年季の入った扉が音を立てて開く。開いた途端に、なんとも言えない保健室独特の匂いが鼻についた。


「ん、どうした。怪我か?」

艶やかな黒髪を靡かせて、先生と思われる人がこちらを振り向いた。
頷くとすぐに椅子から降りてこちらに駆け寄る。
…随分と、小柄な人だ。

「体育でぶつかっちゃって…ぶつかった人は大丈夫だったんですけど、」
「随分派手に擦りむいたな…ちょっと待ってろ」

先生は慣れた手つきで水の入った洗面器と石鹸を持ってくる。
消毒液を使わないのかという疑問は、すぐに先生が答えてくれた。

「消毒液はあんまりよくないらしくてな…俺っちも詳しいわけじゃないが」

傷口を洗いながら時折染みて痛くないかと心配してくれる。随分と慣れた手つきだ。さすが先生というべきだろうか。
創傷被覆材と呼ぶらしい透明なテープのようなものを貼り付ける。痛々しい傷跡が、酷く他人事のように見えた。


「よし、これで完了だ。」
「あ、ありがとうございます…!」

こくりと頷くと同時に保健室の扉がまたがらがらと音を立てて開かれる。
扉を開いたのは先程私とぶつかった友人だった。

私は挨拶もそこそこに、その友人と保健室を後にした。


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