「主ーっ!」
主でなければ君の隣にいられないのに、主でなければ君と話すことさえ出来ないのに、
「……獅子王くん、どうしたの?」
「腹へったー!何か食うもんねえ?」
私は、獅子王くんに主と呼んでほしくないと思ってしまっている。
▽
そう意識して以来、私は主って一体何なのだろうか、と考え込むようになってしまった。縁側に腰掛けてため息をつく。みんなにも素っ気ない態度を取っているかもしれない。……獅子王くんのことも、もしかしたら避けてしまっているかもしれない。嫌われたら元も子もないというのに、何をしてるんだ私は。
そんなことを考えながらまたため息をついていると、獅子王くんが元気よく肩を叩きながら声をかけてきた。余りに突然だったからか声をかけてきた人物がちょうど自分が脳内に浮かべていた人だったからか、一瞬で鼓動が速くなった。
「と、突然どうしたの…?」
「主、体調悪かったりすんのか?」
「? どうして…?」
「最近、主元気ねーなってさ」
よく頭抱えてるし、と続ける獅子王くんから、思わず視線を逸らした。原因は君だよって言ったら、獅子王くんはどんな顔するかな。言わないけど。
「……獅子王くん」
「なんだ?何でも言ってみろ!」
それでも私のことを心配してくれたという事実が嬉しくて、言葉が嬉しくて。ほんの少しだけでもわかってもらいたい欲求に駆られた私は、回りくどく遠回しに悩みを伝えることにした。
「叶わない夢を見るのって、どう思う?」
「叶わない夢……?」
獅子王くんは私に並ぶようにして横に座ると、じいっと私の顔を見つめてきた。それから少しだけ微笑んだかと思うと、また豪快に私の肩を叩いた。
「叶わない夢なんて無いと思うぜ!」
獅子王くんは両手を大きく広げながら、私ににこにこと笑いかける。
「俺らがこんな風に動けるようなご時世だぜ?そんな簡単に叶わないなんて決めつけんのは勿体ねーだろ!」
獅子王くんの言葉はとても強くて、まっすぐで……眩しくて目を細めたくなるくらい、優しい。
「だから、な?元気出せよ、主」
「……獅子王くん…」
「もちろんもし俺に出来ることなら手伝うぜ!」
その優しさが私には辛いんだよ、なんて言えるはずもなくて。優しく微笑む獅子王くんに、作り笑いを浮かべるしかできなかった。
「ありがとう、獅子王くん。頼りない主でごめんね」
「主………」
獅子王くんは目を見開いたかと思うと、そのまま考え込むようにして黙り込んだ。そしておそるおそる私の頭に手を伸ばして、愛おしそうに髪を撫でた。
「……これは、俺の我儘だけど」
「え…?」
「俺は笑ってるなまえの方が好きだ!」
「!」
「だから笑ってた方がいいぜ!それに笑顔の方が夢も叶うって!」
ちょっとだけ照れ臭そうにそう言った獅子王くんに、気付いた時には泣きついてしまっていた。最初はおろおろと所在なさげに手を宙に浮かしていた獅子王くんだったけれど、次第にゆっくりと私の背中を撫でてくれる。
駄目な主でごめんね。頼りない主でごめんね。でも明日から元気に笑顔で頑張るから、獅子王くんに心配かけないくらいに頑張るから。だから今だけはこのまま、獅子王くんのことを好きでいさせてね。
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