「はっ、はっ、はあっ…」

人気の少なくなった放課後、正直あまり運動は得意ではない方だけれど、それでも全速力で走って教室に向かう。
目指すはもちろん、3-A。

握りしめた白衣についた『3-A 薬研』のタグの真相を突き詰めるため、白衣をかけてくれたお礼を言うため、そして何より保健室の先生に会いたいという気持ちのために、私は全速力で走った。




「うえ、げほっ…つ、つかれた…」

だらしないところは見せられない、と急いで息を整えてドアをノックする。
ゆっくりと開けたドアの奥に居たのは、ゲーム機を片手にたむろしている数名の男子生徒のみだった。

「あ、あれ…?」

当てが外れてしまって困っていると、白衣を持っているのに気付いたらしい1人の先輩が、助け舟をくれた。

「薬研なら保健室だぜ」
「!」

お礼を述べてすぐさま保健室に走る。今日は体育があったわけでもないのに、走ってばかりだ。


今度は空振りしないようにと、ドアを開く前に窓から様子を覗く。

「(いた…!)」

いつもの白衣は着ていないけれど、保健室の先生だ。まあ私が白衣を持っているから、当然といえば当然なのだけど。

「じゃあちょっと出てくるから、あとはよろしくね。保健委員長さん」
「おう、任せときな」

「(ほ、保健委員…?!!)」

私が来た道とは逆の道は颯爽と駆けていく保健の先生。いかにもな働く女性と言った風貌で、後ろ姿でさえかっこよく見える。

けれど、そんなことすら考えられないほど私は混乱していた。

おそるおそる保健室に入ると、彼は私を見るなりにこりと口角を上げて、私のところへ駆け寄ってきた。

「さすがに病人ってわけじゃねえよな?」
「は、はい」
「ならよかった」

ありがとうございました、と白衣を返すと、差し伸べられた腕から保健室の匂いがした。

「そういやあ名前を聞いてなかったな」

届けた白衣を受け取って貰ったかと思うと、名前を尋ねられる。こう言う時って、先に名乗るべきなんですよ、なんて。

「苗字なまえ、です」
「いい名だ」


どきどきしてる。


「ありがとな、苗字」

貸してくれたのはあなたなんだからお礼なんて、言わなくていいのに。とか、あなたは名乗ってくれないんですか、とか。
言いたいことはたくさんあったはずなのに、胸がどきどきして、何も考えられなかった。

ああ、どうしよう。
やっぱり私、保健室の先生……いや、保健室の先輩が、好きかもしれない。


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