出陣前、主はオレ達に御籤をさせる。
結果が吉だろうが大吉だろうが凶だろうが、そのみくじ紙を自らの髪へと結ばせるのだ。
いいことは実際に起こるように、悪いことは全て自分に降り注ぐように。
「なまえーー!」
「あ、和泉守さん!ちょうどよかった」
「あとは和泉守さんだけですよ」と、みくじ筒を掲げてこちらに差し出す主。今から出陣するのだろう。
身を引き締める思いで筒を受けとり、振り回す。
今日のオレは大吉の気分だ。そう思いながら小さな穴から一本の棒が取り出す。
書かれていた番号には、見覚えがあった。
「和泉守さん、好きですねえ、この数字」
「まさか………」
主が小箱から取り出した紙を性急に奪い取ると、やはりそこにはでかでかと凶という文字が記されていた。
「この御籤にゃあほんとに大吉が入ってんのかあ…!?」
「前回目の前で堀川くんが当ててみせたでしょう?ふふ、運がないですね」
小箱を懐にしまい直して、主は後ろを向いた。
黒緑の柔らかな髪が風に吹かれて、小さく揺れた。
「でも大丈夫です。どんな悪運も私が全部、引き受けますよ」
そう言った主がどんな顔をしているのかオレには見えなかったけれど、
きっといつものように穏やかで、優しい表情をしているのだろう。
そんなことを思いながら、細い髪に指を通した。
「ん、結び終わったぜ」
「これでもう安心ですね」
「あ。ちょっと待ってくれ、なまえ」
思い立って穴をみくじ筒を主に差し出す。
きょとんとしながらも受け取ると、懐へ直そうとするので、慌てて引き止めた。
「アンタも引くんだよ」
「…え、ええ?!私もですか…!」
首をブンブンと横に振り「和泉守さんのあとだと嫌な予感がします!!」と言う主の手を上から押さえつけ、無理矢理筒を振らせる。
逆さに向け出てきた数字は、…先程と同じもので。
「あああああ〜…!!和泉守さんがちゃんと振らないから…!」
「アンタがちゃんと振らねえからだろ!」
小箱からみくじ紙を出すように促す。オレが手にしたものと同じ、でかでかと書かれた凶の文字に薄く笑う。
主とお揃いなら、凶も悪くないもんだ。
「ほら、アンタもオレの髪に結びな」
「、え」
三つ編みを差し出すと、主は不思議そうな顔をしてオレの目をじっと見た。
髪の隙間から見える髪と同じ色をした黒緑が、小さく光っていた。
「…私のまねっこですか?」
「ま、そんなとこだな。ほら早く結べって」
三つ編みの先に、白いリボンが彩られる。
主のみくじ紙。
結び終わり満足したオレは、そのまま踵を返した。
「んじゃあ行ってくるわ」
「あ、あの和泉守さん!和泉守さんの用事は…」
「ああ、あれならもう済んだからいいんだ」
「…? ………????」
アンタのまじないは、詛いだ。
自らに、災いが起きるように祈る。
オレはどうもそれが納得いかなかった。
だが、それも今日でお仕舞いだ。
「アンタがオレ達の悪運を引き受けてくれるなら、オレがアンタの悪運を引き受けてやるよ」
髪に結んだみくじ紙を見つめてから、俺は刀を握り締めた。
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