空腹と空白


 雲はあんなに速いのに、どうして時間が経つのはこんなにも遅いのだろうか。
手紙が一枚届くたび、また長い長い二十四時間が始まるのかと思うと、更に重苦しい気持ちになってしまう。
手紙を見るのは楽しい。それは、山姥切国広の"今"を知れるから。けれど、山姥切国広の"今"に私がいないのは、どうにもやるせなくて、少しだけ悲しくて、やっぱり寂しい。
そよそよと揺れる向日葵を見下ろしながら、そっとため息を吐いた。


「まーたあいつのこと考えてんのか?」
「獅子王ちゃん……」

隣に来た獅子王は、私と同じように両腕を柵に預けて、向日葵を見下ろしていた。
山姥切国広とも、こうして向日葵畑を見下ろしたのだ。きっと君に似合うだろうからと、向日葵をかき集めたのだ。

「ちび達が心配してたぞー?主がつらそうだーって」
「えっそうなの…?ちゃんと笑ってたつもりだったんだけど…」
「そりゃわかるだろ、何年一緒にいると思ってんだ」

何年、一緒に。そう、何年も一緒だったんだ。なのに、隣に、傍に、山姥切国広がいない。

「ほら泣くなよ〜!」
「ごめ゛ん゛…」

ポンと軽く頭を撫でられ、獅子王はからっと笑った。

「大丈夫。腹減ったら戻ってくるさ」
「……そう、だよね…」
「さ、飯にしよーぜ!」

獅子王の声は優しくて、子供を諭すようだった。大丈夫。そう言った声色は、決して嘘をついているような、私を落ち着かせるために言っただけの言葉ではなかった。
獅子王は優しい。そのあどけない優しさに、幾度助けられてきただろう。

でも、今の私にはそれがひどく腹立たしい。


「お腹が空いたら、か……」

じゃあ、お腹が空かなかったら、戻ってこないのかな。
そう思うとご飯なんて、喉を通るはずがなかった。


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