こくり、こくり。
鳴狐は日向でひとり、頭を揺らしていた。

隣で狐も眠っている。
余程日向にいるのが温かく、気持ちが良かったのだろう。審神者はその様子を見て、小さく微笑んだ。


「…む?主殿!」
「おはよう、狐さん。起こしちゃったかな」
「いえいえ!わたくし、元々寝るつもりではありませんでしたゆえ」
「ここだと風邪ひいちゃうかもですもんね…起こします?」
「そういたしましょう」

狐が鳴狐の名を繰り返し呼ぶ。
その様子を見ながら、まるで母と子のようだと審神者は笑った。

「最近遠征続きで、みんな疲れて寝ちゃってるんですよね…お部屋、どこなら空いてるかな」

そこまで言って、はっとした。
鳴狐と何度も呼ぶ狐を止め、人差し指を口の前に持って行く。

「せっかく眠ってるんだし、やっぱり起こすのはやめておきませんか?温かいし、お昼の間なら大丈夫ですよ」
「主殿がそうおっしゃられますなら」
「そして私たちも鳴狐と一緒になって寝ちゃいましょう!」

なんと!と言いながら狐は耳をピンと立てる。そしてすぐにいつもの様子に戻って、鳴狐にくっついた。
きっと言いたいことが伝わったのだろう。
人付き合いが苦手な鳴狐だ。もしかしたら一人の方が安心できるのかもしれない。
審神者も鳴狐の横に腰掛けて、そっと目を閉じた。

「くっついてると温かいですね」
「はい…わたくし、眠くなってまいりました…」
「……なまえ」
「!」

うつらうつらとしていると聴こえた確かな声。ぐらりと揺れた鳴狐は、そのまま審神者の肩に身を預けた。

「………寝言ですかな」
「…そう、みたいだね」

お互い顔を見合わせてくすりと笑い合って、審神者と狐とは鳴狐と一緒になって眠った。
寝言じゃない、確かな声を、審神者だけが聴き取れていた。
小さいけれど確かな鳴狐の声が、審神者の耳元で「ありがとう」と言ったのだ。

審神者は自分の手を小さく掴んできた華奢な左手を、そっと握り返した。


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