お片付けの時間
あの長く色濃い日々を送った2ヶ月。日中は姿現しを使ってナルと共にジーンを捜索し、蜜夜に明け暮れる日々から解放されてサヤはようやく穏やかな日常を過ごせることになった。自室として充てがわれたドアの鍵を開けながら溜息をつく。
『ーーーマッドサイエンティストめ。』
本当に信じられない、とボヤいていれば背後からは、だからどうした?と声がかかる。自覚があって何よりね、と密かに呟いた。
「−−−別に減るもんじゃないだろう。」
『減ったわよ、確実に。私の何かが。』
「今まで1日だったのが、2週間に猶予を延ばせたんだ。その成果を喜んだらどうだ。」
そもそも、本来は君から求めてきたことだろうとナルは言う。
『ーーーそれはそれ、これはこれよ。』
理解できないな、と言ってナルは自室へと入っていった。
サヤはそれを確認してから久しぶりの自室に入る。ベッドの上で丸まっていたラスクは、漸く帰還した主人の帰りに嬉しそうに鎌首をもたげていた。
『ーーーまぁ、確かに、ありがたいっちゃありがたいのかな.........猶予の分、自由に動ける時間が増えたのだから。』
ベッドの端に座りながらラスクの首を擽った。
『........ナルのばーか』
それにしてもいつになったら私の願いは叶えられるのだろうか、そもそもそんなことは可能なのだろうか.......と思いながら、怠くて重たい身体をベッドに横たわらせる。身体は酷く疲れていたが、それでも以前のような狂おしい程の焦燥感は感じられなかった。
『ーーー父様、ごめんなさい。』
あれだけ恋しく思っていた父親の存在が、今は以前よりも小さく感じてしまう。それどころか、その隙間を埋めるかのように、ナルの......最近見せてくれるようになったあの穏やかな顔が忘れられない。この心の変化は一体何なのだろうか。
『ーーーって、なんでナルの顔なのよ!』
次に自然と思い浮かんできた彼の仏頂面共々、首を振って抹消させる。思い浮かべるのは、父様ただ一人だけで良いはずだ。
そして、いつか必ず。
『ーーーちゃんと貴方の下に戻りますから。』
そう強く宣言すると、サヤの瞳は固く閉じられる。その主人の様子を、ラスクはただ静かに見つめていた。