Lucky 7



*これのそのあと的なお話



とある話を聞いたことがある。騎士に永遠の愛と、忠誠を誓わせたお姫様の話だ。そんな姫が婚姻の儀で着たとされる、純白とは正反対の漆黒に彩られたドレス。騎士と姫は生涯幸せに暮らしたと言う。
しかし勿論、こんなものはお伽噺。恐らく昔のドレス会社が、売上げを上げるために考えた話なのだろう。オリエは大きく溜息を吐いた。どうもそのお伽噺の一文が気になって仕方がないのだ。

「騎士に永遠の愛と忠誠を誓わせたお姫様かー。」

想像するのは甲冑を纏った青年が傅き、黒のドレスを纏った姫の手を取り口付けを落とす姿。なんともまあ、美しく儚いイメージだ。そんなものに憧れる自分も思いの外、少女趣味で思わず笑ってしまう。
データベースとにらめっこを続けて早数十分。後ろを行き交う仲間も少なくなってきた。

「オリエ君?」
「わっ!?」

不意に掛けられた声。注意は完全に画面上に向いていた為、彼の接近に気付くことが出来なかった。エミールはオリエの見ていた先ーー件のドレスが映し出される画面を覗き込む。

「騎士と姫の伝説が残るドレス……オリエ君、遂に君も騎士を目指す気持ちがッ!!!」
「違うーーーっ!!!!!!!」
「ははは、隠す必要はない!僕たちは良きライバルでありフィアンセではないか!」
「ふぃっ!?」

何の気なしに紡がれた言葉にオリエは思わず頓狂な声をあげる。フィアンセ、確かに以前シュトラスブルク家へ嫁がないかと言われて頷いた。しかし、まさかここで掘り返されるとは思っても見なかったのだ。顔が真っ赤になった感覚を覚え、慌てて頬を手で覆う。本当にこの男はマイペースすぎていけない。勿論、好きなのも事実なのだが。

「ドレス。」
「ん?」
「だからー、ドレス!憧れちゃったの!」

観念してオリエは絞り出すように唸った。するとエミールは合点がいったのか「おお!」と手を打つ。穴があったら入りたい、とはこういうことを言うのだろうか。天然に気障なことをさらりと言えるのだから凄い。これでは勝てそうにないではないか。
あー、だの、うー、だのまるで野良犬のようなーー実物は見たことがなく、野良犬とはアーカイブの中の存在だがーー声を漏らすオリエの手を取り、エミールはごく自然に跪く。

「えっ、ルミール?なにしてんの?」
「姫の御前で失礼致しました。我がフィアンセでありライバル……オリエ君。君がこの漆黒のドレスを身に纏う日を楽しみに待っているよ。」

恭しい調子で流れるように紡がれる言葉に、何度目か数えることすら諦めた頬の赤みが増す。なんて気障な男だ。矢張御曹司は伊達ではない。オリエはいつもの調子を取り戻すことが出来ず、口の中でモゴモゴと言葉を転がす。そんな姿を、エミールは微笑ましそうに見つめているのだった。





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