mio eroe umanistico �U
それから数日後。ナマエが下着姿のままイルーゾォに抱えられ、鏡を経由してアジトに連れられてきた。ブティックの試着室にいたところをイルーゾォに見つかったらしい。
アジトに来たがらないナマエの為にホルマジオがチーム全員分のドルチェを買ってきていて、「ここから好きなモンを選べ」とローテーブルにドルチェを広げた。
ナマエはオレが貸してやったジャケットの襟を内側に広げて胸元を隠しながら、小首を傾げた。
「さっさと選べよ〜ッ!」
ドルチェを食いたそうにしているギアッチョが苛立たしげにナマエを急かす。
「こんなに選択肢があったら選べないわよ!せめて2種類ずつ買ってくれたらよかったのに!」
「そりゃあ、悪かったな。ま、一番先に選べた方が得だろ?」
ホルマジオが宥めるように言うが、何が気に入らなかったのか、ナマエは更に怒りに顔を歪めた。
「そうやって、私に答えを決めさせるのはやめてよ!」
「じゃあ、オレはこれを貰うぜ!」
ギアッチョがパンナコッタの収まったカップとスプーンを手に取った。
「それ私が選ぼうとしてたやつ!ギアッチョ、嫌い!」
「あァ〜?選ぶのが遅ぇのがわりィーんだよッ!こういうのは早いもん勝ちだぜッ!つか、ちゃんと服着ろよ、痴女ッ!」
「ちゃんとブラジャーもショーツも隠れてるからいいでしょ!それに元はと言えば、イルーゾォが『今すぐおれと来るかしゃぶるか選べ』って脅してきたのが悪いのよ!せめて私が脱いだ服とか、試着しようとしていたワンピースを拾ってくれてもよかったのに!あー、思い出したらまた腹が立ってきた!イルーゾォも嫌いよッ!」
「おれは『咥えたがり女』のこと好きだぜ?顔はモデル並みだし、いいケツしてっからな」
ギアッチョと同様にイルーゾォまでもナマエに遠慮することなく、ローテーブルに広げられた箱の中からクロスタータを選んで手に取った。
案の定ナマエは頬や鼻先、耳までを真っ赤にさせて、高いヒールで床を何度も踏みつけて暴れた。
「私の顔は上の上で女優級だし、なんでそうやって私から選択肢を奪うの!?」
「オメーはさっき選択肢の多さに怒ってただろ」
今まで傍観していたが、流石にナマエの矛盾した文句は指摘した。
ナマエはオレの方を向くと、赤くなった瞳を細めてオレまで睨んできた。
「ええ、そうよ!選択肢が多いとどれを選んでも後悔する気がするから嫌なのよ!だからといって、既にある選択肢を削られるのも嫌なの!だってもしかしたら、あのパンナコッタが一番美味しかったのかもしれないのよ!?でも、それはもう確かめようがないのよ!ギアッチョが食べちゃったから!最初からパンナコッタが選択肢になければ、私は『パンナコッタを選べばよかった』なんて後悔せずに済んだのに!イルーゾォのクロスタータもそう!クロスタータだけピエモンテのバターとリゴーニのジャムが使われてて凄く美味しいのかもしれない!私がそれを食べて幸せになれたかもしれない!でも、もうわからない!クロスタータを選ぶ機会を奪われたからッ!」
ナマエのあまりの剣幕と妄想が過ぎる主張に他の仲間も引いた様子で、ペッシなんかはオレとナマエの顔を交互に見やりながら震えている。
「なら、チョコタルトを選べ。その店ではそれが一番旨い。ぜってー後悔しねェだろう」
嘘というよりは推測に基づいた、ナマエを黙らせる為の意見だった。記憶が確かではねえが、店主はショコラティエだったはずだ。それなら当然、チョコを使ったドルチェに一番力を入れているだろう。
「……本当?」
ナマエは急に大人しくなり、眉を下げ首を傾げた。いつも怒っているイメージのある女だが、こうして大人しくしていると、赤く染まる鼻先や、充血はしてるが、潤んだ瞳は可愛らしく見えるから不思議なもんだ。
「ああ。間違いねえよ。なあ、そうだろ?ホルマジオ」
「そうだな。確か店内にはチョコも置いてあったし、チョコが有名な店だった気がするぜ」
「そう……そうなのね……」
ナマエは大人しくソファに座ってチョコタルトを手に取った。
「やっぱ、一番美味しいチョコタルトはいつも迷惑かけてる……プロシュートにあげるわ」
「は?」
突然向けられたナマエからの好意に理解が追いつかねえ。確かにドブの件はすげー迷惑だったが、一番の被害者は国外までナマエを連れ戻しに追いかけたリゾットだろう。
「いらねェし、むしろオレの分をやる」
「プロシュートの分ってどれ?あなたが『間違いない』って選んだものじゃないとイヤ」
「……リゾット、早くオレらを召集した理由を教えてくれ」
ナマエが何をしたいのかさっぱりわかんねえから、仲良しクラブと化したチームの茶番を黙って見守るリゾットに話を促した。
「次の任務の話と誰がナマエの面倒を見るべきか話し合うつもりだったが……たった今プロシュートが適任だとわかった。プロシュート、暫くはナマエの面倒を頼む」
「勘弁しろ」
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