pepe le moko


※悲恋傾向
※二卵性双生児のひねくれ妹夢主
※暗チその為→双子のお姉ちゃん→リゾット→←夢主←プロシュート







双子のお姉ちゃんを守るのが私の役目だった。パパとママが亡くなった時、泣きじゃくる姉を宥めたのは私。組織に入った後の仕事でお姉ちゃんの失敗の尻拭いをするのも私。お姉ちゃんを悪い虫から守るのも私。
そして、私が好きになる人は皆お姉ちゃんの方を好きになった。一卵性ではないのに容姿はよく似ているらしいけど、お姉ちゃんの方がスタイルがよくて愛嬌がある。当然皆そっちにいくし、私に言い寄る人はお姉ちゃん目当てとか、双子と3Pすることが目的だった。そんな男は皆私が殺してやった。お姉ちゃんのことがたまに妬ましいけど、心から愛しているし私が守らなくちゃいけないから大事にしている。
とにかく、私の背と胸が幾らかお姉ちゃんより小さくて愛嬌がないせいか、今の職場──暗殺チームでも構われるのはお姉ちゃんばかりだった。
ただ唯一、暗殺チームのリーダーであるリゾットさんだけは私とお姉ちゃんに対して平等に接してくれた。一緒に任務に行けば、お姉ちゃんだけでなく私のことも庇ってくれたし、挨拶をすれば、お姉ちゃんと大差ない反応で返してくれる。淡々と平等に接してくれる、ただそれだけのことで私は惚れてしまった。
リゾットさんが好き。そう自覚してから、リゾットさんを眼で追うようになり、そのうちお姉ちゃんもリゾットさんを見たり、彼のことを話すのが多くなってきて惚れているのがわかってしまった。最近ではお姉ちゃんはリゾットさんばかりに構って、私との予定よりリゾットさんを優先するようになった。
今日もお姉ちゃんは挨拶がわりに口説いてくる仲間を無視してリゾットさんにべったり付き纏っていて、それを見てまた好きな人をお姉ちゃんに取られてしまうと焦るし、私の中で負の感情が黒く渦巻く。
私、嫌な女。駄目な妹。こういう時は何か美味しいものを食べて忘れよう。
そっとアジトを出た。居間から出る時振り返ったけど、誰も私のことなんか気付いてくれなかった。
ひとり寂しく行きつけのバールに行ってコーヒーとチョコタルトを頼んでお店の隅で座って食べていると、私の目の前によく見知った人の姿が現れた。ハイブランドのダークスーツを身に纏ったブロンドに青眼の男──

「プロシュートさん……」

「よう、奇遇だな」

プロシュートさんはテーブルにエスプレッソのカップとソーサーを置いて、私の向かいに座る。
奇遇というけれど、プロシュートさんはさっきアジトにいたような、いなかったような。思い出せないけど、まあ、いなかったとしたら、奇遇といってもいいかもしれない。

「プロシュートさんはさっきアジトにいましたっけ?」

「オメーは自分の姉とリゾット以外に興味ねーのか?ああ、オメーがリゾットを好きなのはわかってる。バレバレだから否定すんなよ」

「そう、ですか……」

リゾットさんへの恋心を気づかれていたなんて恥ずかしくて、誤魔化すようにチョコタルトをフォークに刺して口に運んだり、お砂糖とミルクのたっぷり入ったコーヒーを飲んで忙しくした。
これ以上プロシュートさんと会話をしたくなかったけれど、プロシュートさんはその話題を続ける気はなかったようで、「意外と甘いものが好きなんだな」と関係ない話をしてくれた。

「意外とって?」

「甘いものを口にしているのを見たことがねえ」

「たまに食べます。でも、食べ過ぎたら健康を損ねるから控えてます。口に入れるものは選別しないと病気の元ですから」

「健康オタクか?」

「というより、私が病気になると困る人がいるから気をつけてます。それに病気になっても辞められる仕事じゃあないですから」

「……誰かの為に生きる人生は楽しいか?」

「どういう意味ですか?」

「オメーが責任を持つのは自分だけでいい。だから健康でいるのは自分の為だけにしろ。それなら甘いものはもう少し多く食べれる。他人の為じゃあねーなら神経質にならなくてよくなるからな」

「自分の為……」

そういえば、私は誰の為に生きているのだろう、と不思議に思った。自分の為?いや、今までの人生、特にパパとママが亡くなってからは確実にお姉ちゃんの為に生きている。だって、お姉ちゃんが今もパパとママが亡くなったことを引きずっているのは私の所為だし、私が自分の人生をかけてそれを償わなくちゃいけない。私がお姉ちゃんの人生に責任を持たなくちゃいけない。

「私は今もこれからもお姉ちゃんの為に生きます。あと、ケーキの残り食べてください。食欲なくなりました」

「それなら、オメーが食わせてくれ」

「えっ?」

「手が塞がってる」

よく見れば、プロシュートさんは両手をスラックスのポケットに突っ込んでいるようだった。なんて横着な人なんだろう。
プロシュートさんには以前の任務でお世話になった覚えがあるから断れなくて、言われるままにフォークでチョコタルトを小さく切り分けて、一口分をフォークに刺し、向かいに座るプロシュートさんの口元へ運んだ。
プロシュートさんはそのまま口を開けるのかと思えば、スラックスのポケットから片手を出して、私の手首を掴んできた。驚いたけれど、動揺はしなかった。私の手がプロシュートさんの手によって口元まで誘導されて、プロシュートさんはフォークの先を口に含んだ。
片手をスラックスから出せるなら、どうして私がこんなことをする必要があるのか考えたけれど、私をからかっている以外に理由が思いつかなかった。

「どうですか?」

「甘過ぎる」

「チョコタルトですから」

「知ってる」

「残りもいります?」

「いらねえ。オメーが嫌だと言ってもオレが食わせてやるからフォーク貸せ」

「あの、何がしたいんですか……?」

私はもう食欲がなくなったというのに、食わせてくれの次は食わせてやる、なんて自分勝手にも程があるし、プロシュートさんの目的が推測し辛くて混乱する。

「それを知りたきゃ飯に付き合え。いつが空いてる?」

「それってどういうあれなんですか?」

「どういうあれってなんだ?」

「ですから、つまり……いえ、なんでもないです」

プロシュートさんが引く手数多の色男であることを思い出して、更には実際に目の前に座る彼の容姿は抜群に整っていて、周りの眼を引いていることに今更気付いた。
こんな人が私をご飯に誘う理由なんて決まっていた。お姉ちゃん目当てか、双子をセットで抱きたいだけだ。プロシュートさんは良い人だけど、その恵まれた容姿からして性生活の方は奔放に違いない。

「なんだ?言いかけたことはハッキリ言いやがれ。気になるだろーが」

「本当になんでもないんです……」

「フン。言いかけてやめんのはオメーの悪いところだな。で、いつが空いている?」

「お姉ちゃんの予定聞かないとわからないです……」

「言っておくが、姉は連れてくるなよ?オレとオメーのふたりだ」

「はい……お姉ちゃんに行ってきていいか聞きます」

ふたりと言っても、どうせプロシュートさんもお姉ちゃんのことが好きで私を懐柔したいのだろう。私はそんな手には乗らないという思いで、プロシュートさんに残ったケーキを食べさせられる前に自分で食べきった。



*



プロシュートさんとの食事の日。駆り出された任務で姉妹揃って怪我をした。最悪なことに大事なお姉ちゃんの顔に傷が付いてしまった上に突き指をさせてしまった。私が守れなかったせいだ。
お姉ちゃんが応急室のベッドの上でまた泣いてる。もうお嫁に行けないって。お医者さんはそんなお姉ちゃんを宥めながら、お姉ちゃんの片手の指に包帯を巻き、ほっぺに消毒をしてガーゼを当てるだけという簡単な処置をしていく。飲み薬を処方して替えのガーゼと包帯も出すと説明して、今度は私に向き直る。

「あら、あなたのそれは血……?」

お医者さんに腕の部分が赤黒く濡れた服を見られてしまった。一応かすり傷だし、ハンカチを巻いてその上から手を当てて止血しているけれど、私の手のひらからはみ出す程に血の染みが広がってしまったみたいだ。

「これは私の血ではないです……」

銃創、なんて言ったら警察に通報されてしまうから誤魔化した。個室ならなんとか脅すなりお金を渡すなりできたけど、人の行き交う応急室ではそんなことはできない。

「そうには見えないけれど。ねえ、あなたの方が重傷じゃないの?」

「違います。お姉ちゃん、御手洗い行ってくるから寝て待っててね」

私が患部を洗いに行っている間、お医者さんに余計なことを言わないようにお姉ちゃんに目配せたけれど、お姉ちゃんはお医者さんに鏡を持ってきてと喚いていて、全然通じてなさそうだった。
お姉ちゃんが取り乱してるのは、顔の怪我は女の子にとって一大事だから仕方ない。私の所為で痕になっちゃったらどうしよう、と考えるだけで胸がズキズキ痛む。
応急室だからお医者さんや看護師さん、怪我人やその連れの人たちで部屋が溢れかえっていて、往来が激しい。特に誰にも止められることなく応急室を出ると、チームの仲間たちとバッタリ会った。連絡したとはいえ、こんなに早く来てくれるとは思わなかった。

「お姉ちゃんなら無事です。突き指して顔に傷がついちゃったけど……」

「だ、だだだ大丈夫なのかァ〜!?」

「女の顔に傷とはな。しょうがねぇなァ〜。オレが嫁に貰うしかねえ」

お姉ちゃん大好きな仲間たちが私の横を通り過ぎて行く。その中でリゾットさんとプロシュートさんだけが私の目の前で立ち止まってくれた。
大好きな人が私の為に立ち止まってくれた、それだけで胸がいっぱいで、やっぱりリゾットさんだけは私を見てくれると思えた。

「ナマエ、大丈夫か?おまえの方が酷い怪我じゃあないのか?」

「いっ……!」

リゾットさんに怪我をした腕を掴まれてしまい、耐え難いほどの激痛が走った。
そういえば、お姉ちゃんのことばかり考えていて、患部が凄く痛いことを忘れていた。

「私は大丈夫ですから、どうかお姉ちゃんを見舞ってください」

「だが、服が血だらけだ」

「擦り傷です!いいから、お姉ちゃんのところへ行ってください!プロシュートさんも!」

「オレは行かねェよ。オメーの様子を見に来たからな。リゾット、ここはオレに任せろ」

「……いや、オレが看る。オレの方が怪我に詳しい」

「オレなら女医を誑かして治療させられる」

なんだか大変なことになった。リゾットさんとプロシュートさんが言い合っている。

「……珍しく食い下がるな。オレなら姿を隠してあらゆる医療品を手に入れられる」

「オレは今日、ナマエと飯を食いに行く予定だったのがぽしゃったんだぜ?ここは譲れよ」

そうだ。今日はプロシュートさんと食事の約束をしていたんだ。でも、今はそんなこと重要ではない。早く私の前を退いて欲しいけど、痛みのせいで今にも倒れそう。というか、服に血の染みが広がっているし、患部からドクドクと血が流れて来ている。止血がうまくいっていない。

「あ……」

眩暈がして、その場で倒れ込んでしまった。視界がチカチカ点滅して汗が噴き出してくる。意識が、薄れて──



*



眼が覚めたら病室のベッドの上だった。なんだか頭や身体がふわふわして心地良い。それに飛べそうな程身体が軽く感じる。

「ナマエ、起きたのか?」

「あ……リゾットさん……」

ベッドの傍らに置いてある椅子にリゾットさんがいた。そっか。リゾットさんが私を助けてくれたんだ。

「……モルヒネでハイになるとは聞いていたが、思ったより酷ェな。幻覚まで見るとはあの女医投与し過ぎじゃあねーのか……具合はどうだ?」

「はあ……気持ちがよくて歌でも歌いたい気分です」

「痛みがないならいいが、オメーの銃創は皮膚が焼けた痕が残っちまうらしい。優秀な整形外科医がもうすぐ手術をしてくれるから待てるか?」

「えー?リゾットさん、なんですか?」

「オメーは夕方から手術すんだよ」

リゾットさんに好き、と言われた。嬉しくて胸がじんと温かくなる。

「私も好きです……大好きです」

リゾットさんに手を伸ばせば、大きな手で私の手を握ってくれた。触った感触は男性らしい硬い皮膚とごつごつとした骨張りがあって頼もしい。

「オレも好きだ。愛している。だから受け入れるが……リゾットか」

リゾットさんが病室の出入口を振り返った。私も出入口の方を見ると、そこにいたのもリゾットさんで──どういうことだろう。
もうひとりのリゾットさんはすぐにいなくなってしまった。

「リゾットさんがふたり……」

「まずいところを見られたな。オレらが愛を囁き合ったのも聞かれていたらオメーはどうする?」

「リゾットさんがふたりも……」

「……そんなにリゾットがいいのかよ」

リゾットさんが私の頬に手を当てて顔を近づけて来た。リゾットさんに見つめられている。ぼんやりとしていて焦点が合わないけど、なんとか私も見つめ返した。

「リゾットさん……」

「モルヒネが抜けたらもう一度オレはオメーに想いを伝える。口に出さねーと、オメーはわかんねーだろーからな」

「……はい?」

「今ならやりたい放題だろーが、手を出さねェオレに感謝しろよな。暫く寝て、オレに惚れる夢でも見てろ」

リゾットさんに寝ろと言われた気がして、言われるまま眼を閉じた。リゾットさんは私が眠りにつくまでは手を握ってくれているのを感じて穏やかな気持ちになれて簡単に眠れた。



*



パチリと眼が開いた。何故か病室のベッドの上にいて、ベッドの傍にはプロシュートさんが座って私を見つめていた。

「プロシュートさん?」

「よう。具合はどうだ?」

「……あ、そっか」

怪我をしていたことを思い出した。腕を見たけど、特に痛みを感じなかった。

「特に痛みはないです」

「そりゃあ、よかった。なあ、覚えてるか?」

「何をです……?」

「いや、なんでもねえ。女医を呼ぶ。待ってろ」

プロシュートさんが病室を出て若くて綺麗な女医さんを連れて戻ってくると、女医さんが私に処方薬をこっそりくれて、このことは口外しないように約束させられた。
むしろこっちが女医さんが約束を守れるかやきもきさせられそうだけど、女医さんはプロシュートさんにすっかりご執心のようだからその心配はなさそう。
プロシュートさんと一緒に病室を出ると、そういえばお姉ちゃんも怪我をしていたことを思い出して聞けば、お姉ちゃんはリゾットさんと一緒に帰ったらしい。

「リゾットさんと一緒に?」

「ああ……」

そっか。リゾットさんがお姉ちゃんと一緒にいてくれるなら安心だ。
胸がズキズキと痛んで苦しいし、お姉ちゃんを疎ましく思ってしまうけど、リゾットさんならきっとお姉ちゃんを無事に送り届けてくれるだろう。
病院を出ると、外はすっかり暗くなっていた。
ふと今日はプロシュートさんと食事の約束をしていたことを思い出した。

「あ、食事の件は……」

「勿論中止だ……と言いてえところだが、どこかその辺で食って帰るか?」

「いえ、お姉ちゃんが心配なので。すみませんでした。私の不注意の所為で……」

「気にすんな。仕事の性質上仕方ねえことだ」

「……ありがとうございます」

「それは何に対してだ?」

「えっと、色々と……あ、お姉ちゃんに夕飯どうするか電話します」

お姉ちゃんに携帯で電話を掛けた。お姉ちゃんは暫くしてからでてくれた。

「はーい?」

「お姉ちゃん?私。顔の傷のことごめんね……」

「顔の?あ、ああ……きゃっ、ちょっとぉ……えっと、大丈夫よ」

「誰かいるの……?」

お姉ちゃんが高い声で笑っている様子から、隣に誰かいるみたいだ。

「ええ?別に……ねえ、リゾット、そこやめて……で、何?」

びっくりして通話を切ってしまった。手から力が抜けて携帯を落としてしまい、それに気づいたプロシュートさんが拾ってくれたけれど、受け取る気になれなかった。
 
「ナマエ?どうした?」

「……ちょっと待ってください」

お姉ちゃんの声からして明らかに何かえっちなことをしていた。そして、お姉ちゃんが「リゾット」と呼んだから、相手はリゾットさんなのだろう。
リゾットさんとお姉ちゃんはいつからそんな関係なんだろう。お姉ちゃんに彼氏ができたらすぐ教えてくれるから、さっきふたりがそういう仲になったばかりなのかな。
だとしたら、なんで。なんでそうなったの。リゾットさんにお姉ちゃんを看るように頼んだのは、お姉ちゃんの顔に傷を負わせてしまった罪滅ぼしで、ふたりをくっつけようとまでは全く思ってなかった。それにリゾットさんは別にお姉ちゃんに興味がなさそうだった。なのに、ふたりは──
あまりにも辛くて、胸が苦しくて、泣きたくなって、でもプロシュートさんの手前、泣けなくて、ふっとお姉ちゃんのことを心から締め出した。
心を落ち着かせて、プロシュートさんから携帯を受け取って電源を切った。

「プロシュートさん、アイスクリーム食べに行きませんか?」

「オメーが積極的に甘いもん食うつもりなら、喜んで行く」

チョコタルトを甘過ぎると言っていたプロシュートさんが快諾してくれてよかった。今は誰かが隣にいないと、余計なことを考えてしまって駄目になってしまうから、プロシュートさんがいてくれるだけで助かる。
プロシュートさんと並んで歩いていると、プロシュートさんが全く話さないことに気が付いた。彼は大人しそうな見た目とは裏腹に、意外と話す方だった。だから、沈んだ私に対して気を遣ってくれているのかもしれない。そういえば、アジトにいた時もなかなか話に入れない私に話題を振ってくれたこともあった。それに、今も暗い街路を黙々と歩いていると、向かい側から男の人が歩いてくる度に、私を庇うように肩を抱いたり私と左右の位置を入れ替わったりしてくれることに気付いた。どうやら私を守ってくれているみたい。プロシュートさんは口の悪さに似合わず、とても素敵な紳士であることに今更気付かされた。

「私たち姉妹はもう10年以上アイスクリームを食べていないんです」

ぽつり、と呟くように話し始めた。プロシュートさんになら少しは話してもいいと思えたし、聞いて欲しかった。

「10年は長いな」

「ええ。本当に長かったです……いつかお姉ちゃんと因縁のアイスクリームを一緒に仲良く食べるのが私の夢でした」

「10年振りに食う相手がオレでいいのか?」

「はい。もう私はお姉ちゃんのいる家には戻りませんので。今日、プロシュートさんとアイスクリームを食べたら、私はお姉ちゃんから自由になります。お姉ちゃんを守るのは私の役目じゃなくなりました」

「姉と喧嘩でもしたのか?」

「喧嘩というか……お姉ちゃんがリゾットさんと……」

これ以上は言えなくて黙った。事実を口に出したら心が壊れてしまいそうになる。でも、いつかはちゃんと受け入れてお姉ちゃんを祝福してあげたい。お姉ちゃんが幸せになれば私もいつか幸せになれる気がする。

「そうか……アイス絡みで何か過去にあったのか?」

「それは……いつか話します」

「話して楽になるならいつでも話せ」

プロシュートさんに手を握られて、指を絡めとられた。
なんだか妙に心地良くて、つい最近、こんな気分になったのにそれが具体的にいつでどんな状況だったか思い出せなかった。
その日、プロシュートさんとアイスクリーム屋さんで10年振りにチョコアイスを食べたけど、ちっとも味がしないし、お姉ちゃんから自由になれた気がしなかった。



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