Prologue

 

12月24日、午後2時頃。お財布をショルダーバッグにしまい、建物の隅で待つ3人の元へ合流した。

「いやー母国の経済は終わりっスねー」

空港の外貨両替ショップでリラから円に替えたけれど、円高なのかリラ安なのか相当損している感覚が拭えない。

「母国より先にスペインが崩壊するだろうけどな」

イルーゾォが手に持ったジャッポーネの穴の開いた硬貨を珍しげに見ながら言う。

「失業率は母国の方が安定しているが3%しか変わらん」

リーダーはクレカの入るタイプのシルバーのマネークリップにジャッポーネのお札を閉じた。リーダーが財布を持つイメージはなかったけど、マネークリップ派なんだといつの世代の人か疑ってしまう。

「あのスペインと数%しか変わらないって、いよいよやばいっスよ」

経済破綻するする詐欺を毎年繰り返してるスペインと失業率があまり変わらないなんて本当に母国が心配だ。

「スペインより上回ったら終わりだな」

兄貴は黒のサフィアーノレザーの財布をシャツの内側にしまいこんだ。

「スペインネガキャンはその辺にしておいてーーわくわくするっスね!魅惑の極東の島国ジャッポーネ!着いたっスー!」

まだ空港内だけど、イタリアとはまるで違う空気感にわくわくした。どこもかしこも漢字や見たことのない丸っこかったり尖ったりする文字が書かれているし、周りを歩いているのは8割アジア人だ。
ジャッポーネは仏教の国かと思えば、宗教チャンポンらしく空港内のお店にはクリスマスのデコレーションがされていて、ツリーやリース、サンタとトナカイの置物等が置いてある。事前のガイドブックの情報ではジャッポーネでもクリスマス気分を味わえると書いてあったけど、思ったより本気で祝っているようだ。
ネアポリスから国際線で約14時間もかけてきて疲れたのだけれど、一気に疲れが吹き飛んだ。

「観光で来た訳ではない」

──そう。リーダーの言う通り、私達はよりによってクリスマスイブにボスの命令でジャッポーネで物の回収と物の受渡人と受取人の暗殺の任務を受けている。正直ジャッポーネがどんな国なのか観光したいけど、仕事である以上浮かれていられない。
ちなみに税関を通る時は私だけボストンバッグとショルダーバッグを持っていて、他3人は1日分の着替えの入った鞄を持っているだけという軽装だった為、税関職員にめちゃくちゃ怪しまれたけど、出国の際に荷物を盗まれたことを伝えたら通してもらえた。そんな私達は空港のフィッティングルームで服を着替えて無駄な荷物はコインロッカーにしまったので、私はショルダーバッグのみを持ち、他3人は手ぶらだ。なんで男の人って荷物が少ないんだろう。

「情報分析チームによれば、場所は3カ所までに絞られている。それぞれ手分けして探す。最悪目的の物さえ回収できれば、受渡人と受取人は見逃してもいい。手に入れた物は明日のこの時間まで誰にも奪われずに死守しろ」

「明日のこの時間には空港に戻るなんて、本当観光どころじゃないっスね。とんぼ返りなんて勿体ないっス」

「おれはさっさと任務終わらせて遊んで帰るぜ」

イルーゾォの言う通り、私も早く任務を終わらせて観光したい。

「3カ所に絞れてるって言っても結構キツいぜ、リゾット」

「それでも探すしかない。物は革のアタッシュケースの中に入っている。必ず見つけて回収して来い」

リーダーの命令に3人で口々に承諾の返事をした。
さて、私はこれからバディを組むことになる。私が行くのはーー


→ 六本木で兄貴と一緒だ

→ 夢の国でイルーゾォと一緒だ

→ みなとみらいでリーダーと一緒だ
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