13:リターン

『家族だからだよ』

つい先日の言葉。

「あれは臭かったなあマスクゥ」

「な、なんだよフット兄貴」

ゴールドマスクをからかっているのは兄のゴールドフット。赤くなりながら目を泳がせているマスク。あの時は無自覚で言った言葉だが、すごいことを言っていたのだとマスクはますます赤くなる。

「これからは四兄弟で、本当に雑誌に売り込んでもいいんだぜ」

兄はずっとそんな調子で。
マスクはもう知ったことかと、カオのもとに向かった。

キュ、とショーウィンドウのガラスに手を置く。その店内にカオが見えたからだ。にこにこと買い物を済ませたカオと目が合うと、ひらひらと手を振られてしまった。
それだけでギュインと騒ぐ自分の内部。
店内から出てきたカオに、またひとつギュインと動く。

「マスク、くん」

「まだどっか行くのか」

「もう用事は終わり。マスクくんは」

「俺の用事はカオだけだ」

ス、とカオの荷物を持ちながらマスクはそう言う。

「なあなんで今日はくん付けなんだ」

「外だと目があるでしょ。だからなんとなく」

はやくそんなことを気にしないで良いようになればいいのに。

「ねえマスクくん」

「ん」

「あのね、もうすぐ合宿でしょう。頑張ってねって、送るつもりだったんだけど」

「お、おう」

「家族なら、ついて行っても良い…?」

四兄弟になる日も近いとマスクは思った。