12:集合写真
「マスク!」
「!」
出会い頭突然、飛びついてきたカオにガッチリホールドされるゴールドマスク。
これは抱いていいやつ?それとも抱かないといけないやつ?
そんな葛藤をしていると、カオが顔を上げた。その顔は普段通りの、赤みを帯びた、愛らしい顔。
「どうした」
やっと出た、言葉一言。
マスクなりにできるだけカッコをつけて。
「用事が無くてもマスクと居たいの」
「な」
カーッ!マスクは片手で顔を覆う。ああかわいい。愛してる。
「カオ、おれ…!」
ン、と口を近づければスルリとカオが体を離れて肩すかし。そのまま前のめりに倒れてゆくマスク。顔面を地面に打ち付けたマスクは、絶対に夜いっぱい抱く!と決意する。
「マスク!あれ!広告!」
カオが指差す方向には、大きな看板広告。それには、ゴールド三兄弟の3人がいるのだ。
「いいなあ、兄弟ならマスクと写真に写れるのにね」
「……」
*****
「写真?」
ゴールドアームは新聞から目を離し、末っ子に顔を向ける。
「そうなんだよ!俺、カオと写真撮ったことねえだろ。いや、まあ、メモリーには保存してんだけど。ほら、家族写真っていうか、印っていうか、兄貴…なあ…」
支離滅裂な弟に、アームは笑いをこらえる。写真なんて、好きに撮ればいいのに。どうしてか頼めない奥手の末っ子。
アームは全力で、雑誌の取材だとかなんとか誤魔化し、カオと写真を撮る算段に持ち込んだ。
「ね。私も写って大丈夫なの」
「いいんだよ。そういう取材なんだからな」
「そういう、って?」
マスクは真っ直ぐにカメラのレンズを見ながら答えた。
「家族だからだよ」
それはあまりにも大きな答えである。ああこの写真はきっとふぬけた顔で写っているに違いない。