15:午前5時の抜け殻
死んだらしい。
誰が。ランページもデプスチャージも。
2人ともだ。スパークにエネルゴンをとか、海で歌い続けるとか、いっぱい説明をされたが、カオには訳がわからない。はじめての死なのだから。
いつかは来ると思っていたのに。
コンボイたちは、仲間が死んで悲しんではいたものの、どこか覚悟はできていたのか、普段通りを貫いていた。
泣いたのは報告の次の日だった。
悲しみは後から涙となって放出されるのだ。
海端で泣いた。ここで泣けば2人に届くかもしれない。海に落ちる涙が2人を弔ってくれるかもしれない。
大きな涙の粒を拭って拭ってを繰り返しているカオの側にふたつ影あり。
「出にくいのう…」
「ならば我輩が行く。お前はまた海に戻るが良い」
「あほぬかせ!せっかく復活したんじゃ!カオに胸を貸すのはわしじゃい!」
「カオと接触するのは許さん!」
ケロリと復活していた2人は、あれだけ悲しんでいるカオの前にどうやって戻ったものかと頭を抱えていた。
とても出辛く、どんな顔をすれば良いのかわからなかった。
「はようカオんとこ行って抱きしめてやるんじゃ!」
「やめんかすけべがに!そんなことをしてみろ、蟹足が全て揚げ物になるぞ!」
「誰がすけべがにじゃ!カオを嫁にするのはわしじゃあ!抱いてやるけえの!」
武器は海に落としたのか、殴り合い取っ組み合いの喧嘩が始まる。
あまりに騒がしいので、さすがにカオも気がついた。
「あれ、え…生きてる」
「お、おお!カオ!わしじゃ!」
すぐに立ち上がり走ってくるカオ。両手を広げて受け入れ体制をつくるランページだったが、カオはまずデプスチャージの方へ駆け寄った。
「デプスチャージ!生きてた!良かった!」
「生きているぞ、えーいっ」
擬音を付けるならば「ガーン」という音がピッタリだろう。ランページは青筋を立てる。本来ならカオが顔を埋めるのは自分の胸だったはずなのに。
「エイが生きとったことの方が嬉しそうじゃのう!なんじゃいカオ!」
「嫉妬は見苦しいぞ妬き蟹」
「妬いとらんわい!」
あきらかに妬いているカニなのだが、認めようとはしない。
「ランページさん…あの」
「いまさら気を遣わんでもええわい!」
「だ、だって!嫁にするとか言っていたから!恥ずかしいじゃないですか!」
嫁…?ランページは自分が喋っていた言葉を思い出す。
そんなことを言っていたかもしれない。
聞かれていたのか、そういえば自分は声がデカかったのだなと思い返す。
カオは両手を広げてランページに向かって、言い放つ。
「抱いてくれるんですよね」
その言葉に答えるようにランページはカオを抱き上げた。
「死んじゃったかと思ったじゃないですか」
「カオを残して死ねんのう」
スイっと顔を近づけてくるカニに、わざとらしくデプスチャージが咳払いをする。カオも慌ててランページを押し返し反抗する。
「デプスチャージが見てますから」
「見せつけてやればええじゃろ」
反抗虚しく、しゅじゅちゅ。
見せつけられたデプスチャージは今すぐにランページを殴りつけてやりたかったが、カオがあまりに幸せそうな顔を見せるので。
「もう、ランページさん自分からしておいて自分が一番照れてるじゃないですか!真っ赤!」
「やや、や、やかましい!赤いのはもともとじゃけえ黙っとれい!」
一度死んだのだ、もう追うまい。デプスチャージは心に思う。自分は犠牲になっても良いと思っていたが、あんなに悲しんでくれるカオがいるのだ。死んではいけない。それに不本意だが、カオは蟹が死んでも悲しむらしい。
イチャイチャを励む2人を見守るデプスチャージと海でこの話は終わり。
誰も死んではいけないのだ。