肺腑を衝く

「拾った」

そう言うと、キッドはあからさまに嫌な顔をした。

「おめー犬猫拾ったみてえに言うが、そいつどう見ても人間だろうが」

「だが、拾ったことに変わりはない」

「ああそうかよ」

キラーが女を拾って来た。ボロ切れ纏った、汚ねえやつ。キッドはあまりキラーが何を考えているのかわからなくなることがあると語った。
役に立たなくて捨てられたか、遊び飽きられたか、病か、はたして。病で捨てられる女は多い、たぶんそれだろうと考えていた。キッドは、そんな病原体持ち込まれては困る、と伝えようとも思ったが、どうも訳ありのような相棒に口を出さなかった。

今はキラーの船室で様子を見ている。

「……」

「目が覚めたのか」

女は日の入りごろ、目を覚ました。
目の前のキラーを不思議に思ったのか、ぱちくりぱちくりとする。

「あなたは…」

「お前を拾った者だ」

「ああ」

何かを理解した女は、口をかたくとじる。

「わたしはつかえません」

「こんななりだが、奴隷を従える趣味はない」

「でも、わたしは、他に、何も」

はじめて撫でられたその手はあまりにもあたたかく、撫でられた頭は、それは気持ちが良かった。


「名前は」

「ありません、405と呼ばれてはいました」

「番号か」

「いえ、買われた値段です」

安いな。
キラーは酷い話だ、と腕を組んだ。
万感交々至る。
何か名前をつけてやりたいが、あいにく、キラーは女の名前にあまり良い言葉を知らない。

乱暴にドアが開かれると、キッドがドスドスと入室してきた。

「オイ、そいつおもしろい女だったか?」

「キッド」

「どうなんだ」

「キッド、何か良い名前を知らないか」

時ならず要求されたキッドは、アアと不服そうに舌を鳴らす

「この女は名前が無いらしい」

「ならカオにしろ、時間をかけるなンなことに」

かくしてこの船にカオという元奴隷女が増えたのであった。