笑い飛ばしてサヨウナラ
ゾロ十郎の刀傷は深かった。さすが、とも思った。反して、憎かった。
だがどうだ、今死んでも良い気がしたのだ。こんな身体になってしまって。キッドはどうなったろう。他の船員は。皆どうしたかと考えていると、体は動いていた。這い、どうにか移動をする。
笑っているのに、辛かった。血も流して、意識が遠のく。
ぼんやりとそんな中で、あたたかなものが触れた。
おれはこれを知っていた。
「女、なぜ助ける。おれを人斬りと知ってのことか」
知っていたが、知らないフリをするんだ。その方が都合もよかったし、なによりそれが楽だった。
「喋ると傷に触ります」
「ファッファッ!殺されてえのか。手を出すんじゃない」
「殺されたって、あなたにならかまいません。わたしは」
カオはそう言って笑った。いつもの笑顔かといえば、そうではない。無理して笑顔をつくっている。なんだ、お前まで嫌々笑うことはないじゃないか。
「人斬りを助ける変わり者だ!」
「わたしは奴隷を助けた変わり者を知っています」
「ファッ、ファッ、ファッ、ファッ!」
包帯を巻きながらカオは泣いていた。なんだちゃんと悲しい顔ができるじゃないか。その顔をさせたいわけではないが、今はなんて安心する表情なのだろう。SMILEの被害には合っていないのだという証拠が泣き顔だなんてなあ。
「キラーさんが生きていることが嬉しいです。でも、キラーさんが今、生きるのも辛いと思うならわたしは…止める権利がありません」
「なあ女、おれはなぜ人を斬ると思う。生きるためさ!」
「誰かの命令で斬りたくない人を切って、悲しくないでしょうか」
「悲しいのはおまえが死んだ時だ!だから信じて待っていろ!どこの女か知らないが、名を出すな!生きろ!」
カオをカオと呼ばずに、血をぼたぼたと垂らして、鎌ぞうは去るしかなかった。
カオを逃すためには、どうしたって知人と思われてはいけないのだから。
どうか生き延びて、また会おう。
笑い声でさよならなんて、思わなかった。