だんなさま

「キラーさんが明るい人に!」

船の上、その話題で持ち切り。船員も船長も揃ったキッド海賊団だが、変わってしまったキラーに船員たちは興味津々である。
あれやこれやと聞かれてもてはやされて疲れたのか鬱陶しく思ったのか、キラーは部屋に入って出て来なくなった。

そんな時ノックが3回、キラーの部屋に響いた。

「おれはもう喋らん」

入って来るなと意図した返事だが、ノックした主は下がらなかった。

「キラーさん、包帯変えましょう」

カオの声に、キラーは目を見開いて反応する。帰って来てから一言も話していない。野郎の勢いが凄かったので、顔もまともに見られていない。それに、こんなことになってしまった自分をあまり見られたくはなかった。

「いや、今は」

その瞬間、鍵をかけていた部屋のドアに衝撃が加えられた。どうやらドアを壊そうとしているようで、何かで叩かれているようだ。

「な!カオ、何してる!」

「開けないなら強行突破です、キャプテンならこうします!」

「やめないか!コラ!」

「やめません!」

ボカンボカンと叩かれるドアに堪えられなくなったキラーは、ドアを開けた。そこには、椅子を握りしめたカオが立っていた。椅子をドアにぶつけて壊そうとしていたらしい。一喝しようと思っていたキラーだったが、息を呑み、黙ってカオを見た。ドアや椅子の破片で切った手や頬、自分の姿が映り込んだ瞳や、伸びた髪。

「いつからそんな乱暴者になったんだ」

「キラーさん…」

椅子を投げ捨てて、カオは泣きながらキラーに飛びついた。小さな子どものようにわんわんと声をあげて。子どもをあやすようにキラーもカオを包み込む。ぽんぽんと背中を叩けば、カオの力は強くなった。

「キラーさんおかえりなさい」

「ああ」

「血の匂いがします。また沢山斬ったんですね」

グズグズと鼻を鳴らしながら、カオが服を嗅いだ。ギューと抱き締める力がまた強くなる。

「カオ…」

「はい」

「すまん、嬉しいが…痛い」

傷だらけのキラーの身体を見て、カオはハッとして離れる。


「包帯を変えるために来たんでした!すみません、会えたのが嬉しくて…ふふふ。おかえりなさいあなたって言うんだって、ワノ国では習ったんですよ」


傷口が開いたキラーは血を流して倒れた。
嬉しかったらしい。