好きなはなし
ポツポツと雨が降りはじめた頃。あーだめだだめだとキッドは武器をチェックし始めるし、ワイヤーは昼寝、ヒートは新聞を広げる。
カオは夕飯の仕込みをしていた。そこにやって来たのは、やはりキラーである。
「キラーさん、キャプテンと話をしていたんじゃ」
「雨の日のキッドは機嫌が悪くなる。避難だ」
カオが、ふふと笑うとキラーは引き寄せられる。キラーが手伝おうと包丁を握ると、カオはよくキラーを見た。
「なんだ」
「いえ、なんでも」
この顔をキラーは知っている。絶対に何かあるぞ!と包丁を進めていた。カオは隠し事をするときにはまっすぐこちらを見る。またなにか考えごとをしているのは良いが、変な悩み事であれば良くない。
それから、ヒートに頼んでいた新聞を借りると、キラーは階段にどかりと座って読んでいた。そこへ通りかかったカオはまたまっすぐキラーを見ていた。しばらく見た後、黙って去ってしまったが、新聞を見ているフリをしながらもキラーは見逃さなかった。
「なんだ、心当たりがない…」
新聞の記事が全然頭に入らずに、キラーはもんもんと考える。女のことか?いやそれは前にあった。変なコトやモノは最近持ち込んでいないし、仕事のことだろうか。
「聞いてみるか」
新聞を折り畳んで、さっさとカオに追いつくように早足で歩く。悪いことをした覚えはないのだから、なにもこわいことはない。
「カオ」
呼びかけ後ろから抱きつけば、カオは小さく驚いた声が出た。
「何か隠しているな」
「べ、別に…」
「いいや様子がおかしい。黙って見ていることがあるな。言わないなら脇腹をくすぐる」
キラーが手のひらを脇腹にセットすれば、真っ青になりながらカオは言いますと叫んだ。
「キ、キラーさんの料理しているところと…何か読んでいるところが、その…好きで、つい…」
「なんだそんなことか」
「そ…そんなことです!でもかっこいいと思うんです!いけませんか!も、もう、離してください!」
真っ赤になって必死なカオは面白い。普段おとなしくしている分、こういう姿を見られるとついにやけてしまう。本当にマスクをしていて良かったと思う利点は、こういった顔を悟られないことだ。離さずにカオを抱き直せば、また顔がほころんだ。
もごもごとカオは口を開く。
「え、えっち…」
やわらかな体を堪能していれば、キラーは耳を疑うようなことを言われてしまう。
「な」
「こ…こういったときに何て言うのか教えていただきました」
キッドかワイヤーあたりに入れ込まれた知恵だろうか。思わず手を緩めてしまい、カオが腕の中からするりと抜けてしまう。
抜け出たカオは胸の前で、手を交差させる。
「こんな風にポーズもつけろと」
「間違えちゃいないが、いないが…」
赤面には赤面返しを。