プレゼントのはなし
「これ、わたしに…」
包みを開けたカオは、リボンを手に握り締めたまま中身とキラーの顔を見た。こんな時にキラーはマスクをしているため、どんな表情をしているかはわからない。だが少し照れくさそうにしていることは見て取れた。
「カオは船に乗って、履くものはなんでも良いと言ってそれっきりだろう。女らしいかはわからないが、どうだ」
贈り物は靴である。ヒールが高くて、白かった。
カオは船に乗る前、裸足であった。何か履くものをと言うと、履けるならなんでも良いと答えた。いちばん小柄な船員の靴を履かせて、それっきり。自分で稼げるものではないから、新しいものをカオは望まなかった。
「履いてみると良い。サイズが合わなければ意味がないからな」
キラーがそう言うと、ソロソロとカオは靴を床に降ろした。靴はカオに合わせて作られたかのようにピッタリであった。もちろんキラーがあの手この手でサイズを調べたのだが、それは内緒だ。
「痛くはないか」
「はい、わ、なんだか不思議です」
カオは椅子から立ち上がり、いっぽ、にほ、と歩いた。ぐらぐらと慣れないヒールに足を取られて、カオはバランスを崩す。しっかりとキラーが受け止めると、カオは申し訳無さそうにした。
「すみません、あの…」
「いいんだいいんだ。慣れるまで無理するな」
「はい…」
カオはこんな時に少しだけ、キラーに触れられて嬉しいなどと考えていた。しかしこれではあまりにも情けないとも考えていた。しっかりこの靴を履き慣らして、自分のものにしなければ。
キラーはカオがバランスを崩してくれたおかげで寄り添えて幸せだとしか考えていなかった。
カツカツ、カツカツ。
カオは靴を履き、高いヒールに慣れるように夜間で練習をしていた。
「カオ、珍しいもん履いてンな」
キッドが闇から出てきたかと思えば、そう言って笑う。
「キャプテン!キラーさんが買ってくれたんです、ほら、えへへ。でもヒールが慣れなくて」
「スケートじゃねえんだぞ。そのくらいすぐ履き慣らせ」
キッドはカオの両の手を取ると、ほら歩けと声を出す。赤子が初めて立ち歩きするように、手を引かれてカオは靴を鳴らした。
「綺麗に歩けていますか」
「いいや、産まれたてのシカみてえだな。腰が引けてんだよ」
それからずっとキッドの歩行指導は続いた。案外キッドは面倒見も良く、心配性なところがあるのだ。