あの子の髪が伸びた頃

あれからしばらく後あの子の髪が伸びた頃


「はやく吐けばいいんだぜ」

「キッドの船で見たこと全部」

両手両足縛られて、カオは人質に捕られていた。カオは口を割らない。どこかの海賊に、船の秘密や弱点を吐けと脅されていながらも、カオは怯えてはいなかった。何故だか、いつも通りといった感じだ。

「教えることもありませんし、すみませんが、わたしは役には立てないと思います」

「今や超新星の情報も高値なんだ。さっさと話しな。その後やるだけやって、売り飛ばす」

「まあ、そんなに使ってもらえるなら、わたしも鼻が高いですよ」

どうも調子が狂う、と賊は頬を掻いた。
怯えた顔や泣き顔が楽しかったりするのが賊の性分なのだが、まるで怖がってくれないのだから困ったものである。
こうなれば、と賊はカオの背中の方から服を引き裂いた。情報を今得られなくても、女なのだから今からやるだけやって、吐かせてしまおうと思ったのだ。だが先にカオの背に刻印された奴隷の印に驚いた。

「なんだこいつ奴隷だったのか!」

「遠慮は要らねえな!」

ギャンギャンと騒ぐ賊の一人の腕がその時飛んだ。それを見て、驚く間も無くもう一人は首が飛んだのだ。

一瞬だった。

賊の一味は、虫を殺すよりも簡単に倒されてしまった。それは、殺戮武人ひとりで充分なことだったらしい。

「キラーさん!」

「すまない、港で目を離したばっかりに。怖かったろう」

「わたしがとろとろしていましたから。それに、怖くはなかったですよ」

返り血を拭うと、キラーはカオに歩み寄る。カオの縛られていた手首をほどくと、ほっとする。が、それも束の間、カオがこちらを向いた瞬間にキラーはギョッとした。咄嗟に自分の上着を脱ぐと投げ渡し、慌てて顔を反らせる。

「えっと、キラーさん…寒くはないですか?」

「さ…寒くない。それよりもカオ、どうして服が…ハッ…あいつらか!」

キラーは死体になった賊を睨んで、少しカオをチラ見。これは傷がないかどうか見ているだけであって決していやらしい気持ちではない、と言い訳しながら。
そんなことを知らず、すっぽりと上着を着たカオはキラーを見ていた。

「キラーさん、キャプテンは怒っていませんか?」

「キッドなら何も。はやく帰って来いだと」

それを聞いて、カオはパッと笑った。



「副船長、ど淫乱すぎるでしょう。服ひん剥いたんで?」

「馬鹿おれじゃない!」

船に戻るなり、ワイヤーは2人を見てそう口を開いた。

「お嬢、怪我はないのか」

「はい。少し縛られた跡がついたくらいで」

ヒートは声をかけながら、タオルを持って来た。

「おー帰ったか。遅かったな…って、キラーなんだそれ、カオとこんな少し離れたくらいで我慢できなくなったのか?」

「誤解なんだが」

キッドまで、キラーの服1枚着たカオが気になったらしい。

またこうして、船での暮らしは流れてゆく。結われたカオの髪が潮風に吹かれて、なびいたりしながら。