つぼみ
「トリスタン!トリスタンはどこ!」
階段を降りる音と叫び声が屋敷から響く。
ポロロンとトリスタンは屋敷の庭で返事を奏でた。
「あなたまた本の栞を動かしたわね!同じところをもう3回も読んじゃったじゃない!」
「それはそれは」
カオはトリスタンの両頬をつねって仕返しをするが、トリスタンは全然参っていないようで笑っている。
「ほんにゃほとをひてもひひまへんよ」
「私の気はおさまるからいいのよ」
カオは何でも卒なくこなし、勉学も運動も料理も裁縫も得意である。ただひとつ人生で失敗したと思ったことはトリスタンを召喚したことだと彼女は言う。
最良のクラスであるセイバーを召喚することを目的としていたが、いざやって来た英霊はといえばアーチャークラスのトリスタンであった。
この時代において聖杯戦争は無く、それぞれ一人一騎のサーヴァントを召喚して仕事を手伝わせたり術を学んだりという暮らしをしていた。そんな平和な世の中なので特にサーヴァントのクラスを気にすることはないのだが、カオの家系はセイバーを召喚することが恒例になっており、カオもそうなると思っていた。
そして何より、トリスタンとは馬が合わないとカオは強く主張をする。
「もう、必要な時には居ないくせに。単独行動なんて、厄介なだけだわ」
「カオは一人で十分成果を出しますから。私は街で面白いものを探していた方が世のためです」
「面白いものの8割が女のことでしょ。そうふらふらと女性を口説き回られては困るの、迷惑よ!」
「グー…」
「また寝たフリをする!」
狸寝入りのトリスタンを揺さぶり、誤魔化すなとカオは声を張り上げる。厄介な組みになってしまったと、飼われている鳥までもが思ったそうだ。