ユーステス
「本当にさわっても良いですか?」
「構わない」
団長に見守られながら、カオはユーステスの耳を触らせてもらっていた。
「ふふ、わたしのと違う。たのしい、ありがとう」
「言えば触らせてやる」
屈んでいたユーステスはスクと立ち上がり、カオの頭に手をやった。耳を触られるのでは無いかとビクリとしたカオだったが、ポンと置かれただけの手にほわりと笑う。
「カオちゃんが他のエルーンの耳が好きだって聞いて、ユーステスなら触らせてくれるかなと思ってさ!良かったよ、嬉しそうで」
「わたし、自分の耳も好きになりたい。それに、自分にないもの見るの、なぜかたのしい」
良い静寂だとカオを妹のように優しく見るユーステス。カオもふにゃふにゃと笑いながら、他のエルーンと話せることがとても嬉しかった。
そんな様子を見ていたシスだけが、殺意に溢れていた。俺もエルーンで耳はあるのにと瞬きもせずにユーステスを睨み付けているシス、それを見て苦笑いするシエテ。
「シスくん妬かないで」
「妬いてなどいない。ただ何故俺に頼まないのかと思っているだけだ」
それが妬いているということだよとシエテは喉元まで出かけたが、面白そうなので黙っていることにした。俺を差し置いて他の男の耳を触るだとと、シスの独り言を聞きながら。
満足げにユーステスと団長と別れたカオを、シスはすぐに捕まえた。おいと声をかければ、カオは嬉しそうにシスの名前を読ぶ。
「何をしていた」
「耳をさわらせてもらった!」
「何故あいつなんだ」
「団長さんが頼んでくれたから、シスも頼む?」
シスは黙ってカオを威圧した。もちろん、黙ったままのシスの考えはカオにはわからず首を傾げるばかり。
「俺もエルーンなんだぞ」
「う、うん」
「何故あいつなんだ」
カオはもじもじと顔の前で指を合わせる。答えるまでここを通さないと決意しているシスは腕組みをしたままカオを見下ろしていた。
「シスに頼みたいなら、こうした方が触らせてもらえるって、団長さんが言ってた……」
「なに」
様子を見ていた団長に気が付いたシスは、逃げ出す団長を猛スピードで追いかけた。